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世界の歌姫に花束を 60 ページ17

ウタちゃんは、その海賊旗をじっと見つめた後
はっと、何かに気がついた様子で
海賊旗を投げ捨て、とある一軒の家屋へ走っていく



「あ、待って!」



私とブルックさんは、急いで彼女の後を追いかけ
屋根が砲弾で壊れた家屋へ入った

そこには、既に壊れてはいるが
様々な楽器が散乱していた

バイオリン、チェロ、フルート、クラリネット
トランペットに、チューバ、トロンボーン・・・
奥の方には苔に覆われたピアノまで飾られていた



「ここは、楽器屋さんだったようですね」


「えぇ、大きな楽器屋さん・・・」



ウタちゃんは奥の方にあった
形はかろうじて残っているバイオリンの前に
戸惑った表情で、立ちすくんでいた
傍に駆け寄ると、彼女は私の顔を見て



「・・・A、何か聞こえなかった・・?」


「え・・・私は何も・・
ブルックさん何か聞こえた?」


「いえ・・・・ウタさんは何か聞こえたんですか?」


「・・・音が、聞こえたの・・・ここから・・・
バイオリンの音だと思って・・・」


「誰か、いるのでしょうか・・?
お二人とも、気を付けてください」



ブルックさんが顔をしかめて
腰に差してある剣に手をかける



「・・・ッ!・・また、聞こえた!
今度はチェロの音!」


「あ!ウタちゃん待って!
一人になっちゃダメ!!」



ウタちゃんはまた音が聞こえたようで
一目散に、音が聞こえる方へ走り出す
私たちも急いで彼女の後を追いかける


それは何度か続いた
チェロの次は、フルート、オーボエ
クラリネット、ファゴット、ホルン
トランペット、トロンボーン、チューバ・・
木琴の音が続いた頃には
私たちは町の中心から外れ
森の中に迷い込んでいた



「・・・Aさん、まずいですね
何かに誘い込まれている気がします」



ウタちゃんには聞こえないように
ブルックさんは小声で私に耳打ちした



「しかも、ウタさんが聞こえている
楽器の音の順番・・・
オーケストラの配置順ですよね?
能力者の攻撃手順かもしれません」


「・・・確かに・・
ウタちゃんに話して、ここは一度船に・・」


「あ!ピアノの音!」



ウタちゃんに話しかけようとした瞬間
彼女はまた新しい音を聞きつけたらしく
木琴の音が聞こえた家から飛び出す



「仕方がない!
今は彼女を追いかけましょう!」


「はい!」



私たちも急いで、その家を飛び出した瞬間
白い霧が辺りを立ち込め
ガサガサと、草陰の奥から
何か、すばしっこい何かが動く音が聞こえた

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作者名:ロモォコ | 作成日時:2023年8月4日 23時

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