【刀剣乱舞】刀剣男士の見る悪夢。【短編集】 (ページ5)

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美の夢。【鶴丸国永/大包平】ページ5

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【鶴丸国永の夢】

夢を見た。まだ幼い俺が、あちこちをたらい回しにされる夢。
神社から持ち出されたり、墓を荒らされたり。何度も何度も引きずり出される。
最初の内はその行為が憎くて恨めしくて仕方無かった。
なのに何度恨んだって、その行為は繰り返される。それに疲れてしまった。
だから憎悪を捨て“驚くだけ”にした。けど隠した本音は、静かに自分の首を絞めていく。
嗚呼、こんな思いをするくらいならば。

求められる刀でなど在りたくなかった。

そう考えてしまうのも、この人の身ゆえとしてしまおう。

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【大包平の夢】

夢を見た。かの美しき五振のうちに、あいつではなく俺が選ばれる夢。
叶わない物語。こうなりたかった。美しいと言ってほしかった。
どうして誰も、俺の美しさに気が付かなかったのか。
なぜ美しさも強さも備えている俺に見向きせず、天下にかの五振在りと謳ったのか。
悔しくて仕方がない。だけど、あいつらが美しいのもまた事実。
同郷のあいつのように気にせずいられたらどれだけ楽だろうか。
嗚呼、求められず己の価値に惑う刀などではなくて。

求められる刀で在りたかった。

それは…この人の身と物語ゆえ、思う事か。

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【解説/解釈】

求められ続け様々な場所を巡った刀・鶴丸国永と、
池田輝政という只一人に見出された刀・大包平の二振りが悪夢を見るとしたら。

強く求められた刀と、選ばれることが出来なかった刀。
二振はある種正反対なのではないかな、と思います。

鶴さんは美しさゆえに多くの人に求められました。
墓を暴く、神社から持ち出すなどどちらもとても罰当たりの行為です。
他にも鶴さんには沢山の物語があります。
その物語はきっと鶴さんの記憶を混乱させる。
そのせいで鶴さんは自分の美しさを恨んでしまうのではないかと思います。

大包平は美しさと強さを兼ね備えながらもく天下五剣に選ばれることが無かった刀。
物語もあまり残っておらず、
“池田輝政見出した”というのは拠り所となる物語。
これが無くては大包平は歴史にも残らぬ刀となっていたのではと思います。
故に見出された美しさに固執し
“自分は美しいのに”という強い反発心を天下五剣らに抱く。

美しさという同じものを持つがゆえに、正反対の願いを抱く刀剣たちの物語。
それを今回は書かせて頂きました。