血の夢。【歌仙兼定/肥前忠広】 ページ4
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【歌仙兼定の夢】
夢を見た。元の主が僕を振るい、家臣を次々と手打ちにする夢。
違うんだ、僕は貴方にそんな風に扱われたかったんじゃない。
貴方が狂気に身を落とす様を見たかったわけではないのに。
雅を愛し、風流を愛した主こそ、僕の望んだ主であるのに。
何度も何度も貴方を止めた。
それでも僕の声は貴方に届かず、
貴方はいつからか『鬼』と呼ばれ恐れられる存在へと変わった。
嗚呼、こんな貴方を見るくらいならば。
細 川 の 刀 に な ど な り た く な か っ た 。
そう望んでしまうのは、人の身を得たからこそなのだろうか。
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【肥前忠広の夢】
夢を見た。沢山の罪なき人々を斬り倒す夢。
平和を望んだ主から譲られ、先生やお国の為と人斬りになったあいつに振るわれる。
斬りたいわけじゃなかった。人を斬るのは怖かった。
それでもきっと、この戦いが終われば差別から解放される。
それだけを信じて戦ってきたあいつに与えられた未来は“死”だけ。
もう何も斬りたくない。でも今だって、俺は斬ることしかできない。
それ以外どうすれば良いかなんてわからねえんだよ！
嗚呼、こんな血塗られた物語に染まるくらいなら。
岡 田 以 蔵 の 刀 に な ど な り た く な か っ た 。
人の身を得たから、んなこと願っちまうのか？
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【解説/解釈】
細川忠興の刀・歌仙兼定と
岡田以蔵の刀・肥前忠広の二振りが悪夢を見るとしたら。
二振とも“血塗られた物語”を抱えているので
タイトルを“血の夢。”としました。
歌仙さんは少し舞台から引っ張ってきています。
忠興は武人でありながら風流を愛した文化人でもありました。
歌仙さんはきっと、文化人としての元の主が好きだった。
だけどあの時代では穏やかな文化人だけでいることは難しかった。
それを知っているから、元の主だけを責めることは出来ず
歌仙さん自身も辛くなってしまうのではないでしょうか。
僕の中での肥前くんは元の主の影響から少しばかり泣き虫さんです。
こちらも舞台を引っ張っています。
肥前くんの「斬りたいわけじゃねえんだよ！！」がすごく印象的で。
元の主と同じ想いを抱え、でも戦うしかない世界にいる。
その葛藤が彼にはあるような気がしています。
血塗られた物語を持つ刀達は敵を斬らねばならぬこの世界で
どんな夢に、どんな想いを抱くのでしょうか。
美の夢。【鶴丸国永/大包平】→←誠の夢。【和泉守兼定/加州清光】
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作者名：夜藍 | 作成日時：2021年1月8日 16時
