可愛くなる魔法 (ページ9)

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変わりたいページ9

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歓声が響くーーーー

僕のうちわを持っている女の子が見える。

自分に必要とされていると思い込ませる。

ここにいるのは僕だけど僕じゃない。

みんなが求めているのは千秋であってAじゃない。

あぁ、今日は身体が軽い。

喉も痛いし、かなり悪い環境下のはずだけど、アドレナリンが出ているせいかステップも軽やかに踏める。

サビで久しぶりに高音を出すと会場が湧き上がった。

あれ、こんなに楽しかったっけ。

いつからか楽しめなくなっていたのに今日はとても楽しい。

限界まで高音を出す。

あ、あの最前列の女の子泣いてる。

僕のファンだ。

歌い終わると同時にウインクをして指を指すとその場に崩れ落ちる女の子。

今日は夢みたいな日だ。

あの日をきっかけに僕たちは前よりもテレビ出演が増えて以前より忙しくなった。

あの日以来あの曲を歌うことはまだしていない。

あんなに高揚感に包まれていたのに毎日つまらない日々の繰り返し。

「忙しくなったのに冴えない顔をしているね」

「わっ、びっくりした。天くんか‥おはよう」

「おはよう」

廊下で声をかけてくれたのは九条天くん。

前にTRIGGERの番組に出てから話すようになった。

「で、何か悩み事？」

「うーん。悩み事と言うかなんと言うか？」

「なにそれ」

「うーん。例えば、自分のやりたいことをやろうとすると誰かを裏切ることになるってなったら天くんはどうする？」

「‥。そのやりたいことにもよるけど、僕は一度人を裏切ってるから。」

「え‥。」

「そんな難しい顔しないで。まぁあの2人なら自分のやりたいことをやって裏切りを裏切るくらいのことを言うんじゃない？」

「裏切りを裏切る？」

「そう、多分どっちも諦めたくないから裏切りだと思わせない、思わせてたまるか、とか熱いこと言うだろうね」

「天くん、それ楽さんと龍さん？」

「さあ？」

「あははっ、ありがとう天くん！」

天くんのことだから自分で考えろと言われるかと思ったけどしっかり答えてくれたのは意外だ。

「まぁ‥友達だし」

「天くん！！」

「うるさい」

「僕も大好きな友達だと思ってるよ」

そう言って手を握りぶんぶん振り回していたら、天くんの帰りが遅いと見に来た楽さんに不思議そうな顔をされたのは無理もない。