可愛くなる魔法 (ページ20)

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「ありがとうごさいます」

深く頭を下げると思いがけぬ優しい声が降ってきた。

「うちはタレントを第一に考えてる。君のやりたいこと、やりたくないことを優先する。周りを気にせずやればいい」

目頭が熱くなった。

こんなこと言われたことなかったから。

ちゃんと1人の私として認識されたんだ。

やりたいことをしていいんだってなんだかとてもわくわくした。

八乙女事務所に入ってから2週間。まずデビュー曲の作成に追われていた。

この曲で私は私として再出発する。

この曲が出るときに私自身のことも発表するのだ。

作詞作曲全てやらせてもらうからには満足のいくものを作りたい。

そう意気込んで今日も事務所の一室に引きこもる。

コンコンッ

「はーい！」

「よう、進んでるか？」

「そこそこです」

「ほら、カフェオレ。お前これ好きだろ？」

さり気なく気を遣ってくれて、いつも様子を見に来てくれるのは八乙女楽さん。

花丘千秋としては話したことはあったけど、ここ最近はよくお話をする。

私の本当のことを知った時の楽さんはすごく驚いていたけど「男にしちゃ可愛すぎてたから今が丁度いいよ」と言ってくれた。

事務所の先輩になるなんて1ヶ月前の私は予想もしてなかっただろう。

「楽さんってそういうとこですよね」

「どういうとこだよ」

「モテるわけがわかります」

「なんだそれ」

ははっと言って私の真向かいに腰を下ろすと思い出したように話し始めた。

「そういえば今日久しぶりにTRIGGER3人揃うぜ」

「天くんと龍さんびっくりするかなぁ」

「そりゃするだろ」

「えへへ、天くんのびっくりした顔早く見たいですね」

「一周まわって無の顔すると思う」

TRIGGERはこの1ヶ月、天くんは舞台、龍さんはドラマ、楽さんはバラエティやCM撮影など単発の仕事だった為よく会えていたけど後の2人はなかなか事務所にも寄れていなかったらしく顔を見ていない。

kk解散騒動の後、天くんからどうしてるの？とラビチャがきていたけど当たり障りなく返信しておいたのもあり、私がここにいるのはかなりびっくりするだろう。

「お、噂をすれば事務所着いたみたいだぞ。お前も行くだろ？」

「行きます」