可愛くなる魔法 (ページ13)

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新しい世界ページ13

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「で、家を出て来たってわけか？」

「うん‥」

「どうすんだよ」

「どうしよう」

あの後行く当てもなく兄の千秋の家に転がり込んだ私の目の前で溜息をつく我が兄。

「まぁとりあえずお前がアイドル続けるにしても今のお前じゃフリーは無理だ。どこか事務所入んねえと」

「うん‥」

「あと、女に戻るったってお前服は？」

「な、ないよ。男の子用のしか」

「化粧したことは？」

「テレビとか雑誌用のお化粧ならメイクさんに‥」

「‥。お前そんな突っ走るタイプだったか？」

「傷心中くらい優しくしろよ」

「言葉遣い」

「ゔっ‥」

問題は山積みだし、男の子としての癖が抜けないし先は長そうだけど、なんだかすごくスッキリしてる。

これからは好きなことをするんだ。

好きな服を着て、好きな歌を歌う、

好きな人も作って、その人のために可愛くなる。

髪も早く伸ばしたい。

「やりたいことだらけだぁ」

「‥いっ、‥！おいっ、起きろ」

お兄ちゃんの声で目を開けると慣れない天井が目に入り、そういえば昨日からお兄ちゃんの家に来てたんだった。と思い出す。

「おはよー」

「おはよーじゃねぇ！ニュース！」

「え？」

腕を引っ張られてリビングに行くとテレビには『kid look 解散！』の文字が。

「え？」

「あのババアすぐに動いたな」

聞くところ私が脱退するだけの騒ぎじゃなくて、事務所での大幅なグループ総替えが行われるらしい。

2人メンバーチェンジとかなんとか言っていたからこれを機に新しく人気の出そうな子達を集めてグループを作るのだろう。

「まぁもうお前はお前なんだし、好きなことしろよ。気にすんな」

と雑に頭をぐしゃぐしゃ撫でるお兄ちゃん。

お兄ちゃんなりの優しさなんだろうと、黙って頷いた。