現実世界は一度きり【茅ヶ崎至】 (ページ13)

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第13話ページ13

至 side

春組公演も無事に終わり今は夏組の稽古中。

そして今日は金曜日。絶好の引きこもり日和だ。

取りに行けていなかったゲームを受け取りにアニメットに寄る。なんて最高の金曜日。

と思っていたところでガチャガチャのところにしゃがむ見覚えのある後ろ姿を見つけてしまった。

あれ、縁ありすぎじゃん。

それは数週間前に居酒屋でも会った綴の幼馴染だ。

気づかないフリをして店内に入ろうとしたけど明らかに何かをブツブツと言っているのに気付いて、さり気なく近くに寄ってみる。

「この緑の感じ‥絶対にそう‥え、まって、ここで逃したらどこで出会うの？まって、でもこの緑‥いや、違うこれは絶対にそう」

至「Aちゃん」

なんだか面白くて俺らしくないけど声をかけてみる。

「あっ、茅くん遅いよ！両替行ってる間にこのラスト一個無くなると私のおたく人生に関わるから200円貸してすぐ返すから」

と、顔はガチャガチャの中身を凝視しながら早口で喋っているけど、これは人違いをしているようだ。

まぁいいか、とAちゃんの隣にしゃがんで200円を投入する。

ガチャガチャーーーーー

「わーーー！ほら！やっぱり！けいたくんだ！！！！みてみて茅くん！！これが噂の茅ヶ崎さんがそっくりの‥んひょえっ！！？！？！？」

なんで声出してんだ。

本当は大声を上げて笑いたいところを踏みとどまってあくまでも冷静に話しかける。

至「へぇ、俺に似てるんだ？」

「ち、ち、ちがさきさん！？！？？なぜ！！？！？」

至「通りかかったら後ろ姿見つけて」

「ああああの！！！にしゃくえん！！」

真っ赤な顔をして、噛みまくりな姿に笑いが漏れる

至「お目当ては出た？」

「へ？‥はいっ！！！見てください！これ」

そう言って見せてくれたのはいかにも乙女ゲーム上位に食い込んできそうなキャラのけいたくん。

「お恥ずかしながら私ゲームとかすごくしちゃうんですけど、この子が1番好きなんです。茅ヶ崎さんに似てるなぁって‥あの、めちゃくちゃ学校ではイケメンでなんでもできる！みたい感じなのに実はすんごく干物おたくなんです」

そこだけは茅ヶ崎さんと違いますけどって笑うのを見て、笑顔が固まる。

いや、俺も思いっきり外面の良い干物おたくです。

と大声で主張したいのを我慢して爽やかに笑う。

至「はは、そんなことないよ」

「え？」