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「ごめん...」
龍「もういいから」
「ごめんなさい...」
昨日口にすることができなかった色んな感情が交差したのか、涙を流し始めるA。
龍「まだ気分悪い？」
「もう大丈夫...」
Aがそう言ったので支えながら立ち上がらせると、洗面所でうがいをするように促した。
リビングに戻ってくると、龍友は先ほどよりは落ち着いた様子でソファーに犬達と座っていた。
Aが恐る恐る隣に座ると、意外にも龍友はAの肩を抱き寄せた。
「龍友くん、私...」
龍「何も言わんとって」
忘れたいねん、とAの言葉を遮りAを更に抱き寄せる龍友に、Aはそれ以上話をすることを諦める。
ただ2人でソファーに座ってボーッと寄り添う時間が流れる。
龍「なぁ...」
「ん？」
龍「僕が今どんな気持ちかわかる？」
特段冷たいわけでも、かといって優しいわけでもない声で、龍友がAに問いかけた。
「...ごめんなさい」
龍「Aちゃん昨日からそれしか言わないやん」
「じゃあ...それ以外、何を言ったらいいん？言えることないやん...」
龍「...そっか」
震えた声のAにそれだけ言うと、龍友は立ち上がって別室へと行ってしまった。
Aは今は距離を置いた方がいいと判断して、数日分の着替えや化粧品などを適当に鞄に入れ家を出た。
龍友は玄関が開く音こそ聞こえたが、仕事に行っただけだと思い1人別室で心のざわつきを抑えようと格闘していた。
なぜAは謝るだけで弁明もしてくれないのか、なぜそもそもキスなんかしたのか、同意の上だったのか、など考えればキリがない様子だった。
この日はレコーディングが入っていたので雑念を取り除こうと必死だった。
こうして2人はそれぞれの時間に、それぞれの場所からそれぞれの仕事へと向かった。
涼「お疲れ様です」
先にレコーディングをしていた涼太がブースから出てきた。
龍「お疲れ」
涼「何でそんな怖い顔してるんすか(笑)」
そう言って涼太は笑ったが、レコーディングする曲が切ないバラードだったので、気持ちを作っているのかと思って、それ以上は特に触れなかった。
一方のAも周りのスタッフが気付くほどにいつもと雰囲気が違っていた。
『Aさん、体調悪いですか？』
「あー...うん。なんか気分悪い」
『大丈夫ですか？』
「そのうち治るよ」
そう言っていつも通り打ち合わせとリハーサルを行った。
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作者名：べてぃ。 | 作成日時：2020年4月17日 23時
