17話目-理由 ページ19
廊下を歩いていると見覚えのある男とすれ違った。
最初私を見ていた医師だ。
しんぺい神と呼ばれていたな。
「あ、調子はどう?」
「あぁ、はい。記憶も少しずつ戻ってきてるみたいで。」
「そう。それは…よかったね。」
少し不自然な間があった。
「ええ。…ただわからないことがまだまだ多くて。トントンには嫌われてしまっているようですし。」
「…へぇ、彼が。それはまた、珍しいな。」
一体何が珍しいのか。しかしその言葉の意味を把握することは出来なかった。
「それで何がわからないん?」
「私、記憶をなくす前ここにいました?」
「…そうだね。これは口止めされてたんだけど…。」
そう言うと彼はきょろきょろとあたりを見渡す。そして私の耳にそっと呟く。
「君が来たのは3か月前やけど、君、任務中に怪我したんよ。それで記憶喪失になったんやで。みんな、君が任務で怪我したと思ったらプライド傷つくん思って黙っとたんよ」
任務中に怪我…確かにそんなヘマしたと知れば落ち込むな。実際そんな些細なことで記憶をなくしてるのだから今凹んでいる。
「これ聞いたって内緒な。」
そう言うと彼は私の頭をわしゃわしゃして去っていった。
なるほど。それなら地図に見覚えがあったのも刀が馴染むのも分かる。3ヶ月でここにも馴染んだのだろう。
…それにしてもここの人達は人を信用しすぎじゃないのか…。
3ヶ月前の私はどんな感じだったのだろう。
まだまだ記憶ははっきりしない。
13人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:上田 | 作成日時:2017年1月27日 10時