忘却の果てに[wrwrd!] (ページ11)

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10話目-煙草ページ11

探索がてらテラスに出る。

空には無数の星が輝いている。
今日は雲ひとつないようで星ぼしはとても煌めいている。

「先客か。」

背後からの声に振り向くと紫のストールをまいた男が立っていた。
その男はタバコに火をつけ咥えた。
兄さんと呼ばれていたな。

「ここには慣れたか？」

兄さんはこちらを向かず遠い地平線を眺めている。

「無回答。私にとって環境への慣れなど不必要です。」

「…じゃあお前にとって大切なものはなんなん」

「主に従うこと。その主は名をくれたグルッペン･フューラー。」

兄さんはそれには何も言わず、ふぅーーっと煙を吐いた。

「あなたにとってあの男はどのような男ですか？」

「あ？…あー、まぁ…利害が一致してる関係？…わからんなぁ。」

眉をひそめているあたりほんとに何も思ったことがないようだった。

「じゃあ、お前にとってはどうなんだ？」

「私にとっては主です。それ以外の何者でもない。」

「お前は何もわからずこの城にいるけど、信用してるんか？」

「…否。信用など無意味です。」

「…そうか。…変わったな。」

そう呟くとぽんと頭を撫でられ彼は去っていった。

私は変わったのか…？

そう聞くことは出来ず私はただ彼の背中を見送った。