行動 ページ15
振り返ると、いや、
振り返るまでもなく太宰君が其処にいた。
石川さんの手前太宰君の手がこのままだとまずいなと思い、さりげなく距離を取りながら話しかける。
『太宰君、さっき少しボーッとしてたけど大丈夫だった?熱中症には気を付けてね』
「ふぅん...成る程ね...ありがとう千田さん。...石川さん」
太宰君が石川さんを呼ぶ。
「は、はい」
石川さんは妙に上ずった声で返事をした。
「一寸いいかな」
「いいよ、うん」
じゃあね、千田さん。また後で。と言って石川さんと歩いていく太宰君。
先程手を置かれた頭に触れ、何の話なんだろうなぁと考えながら振り返る、
と、
『うっわ』
「うっわって何だよ手前」
中也君が立っていた。
『あ、ご、ごめん、いるとは思わなくて...もしかして、最初からいた?』
「まァ、無いよ、ってとこからはいたな」
『ごめんなさい気付かなかったよ。で、何かあったの?』
「...あー...いや、何も。...何も。」
何で2回言ったんだ大丈夫かな...
「なぁ...千田、A」
『な、ど、どうしたの』
急に本名が来た。いや別に、構わないんだけど。
朝から彼の頭には1度も結ばれていなかった彼の鉢巻きを握り締めながら、中也君は言った。
「...俺、鉢巻き結べねぇんだよ、不器用だから。...結んでくれねぇか」
『...いいよ?でも何で私?太宰君とかでも良いんじゃないの』
「太宰が俺を手伝うと思うか」
『思わないね...ごめん。いいよ、それ貸して』
「ありがとな」
中也君から鉢巻きを受け取って結んであげた。
「...悪い、本当にありがとな」
『いやいや、これくらいどうってこと無いよ』
「じゃあ、席に帰ろうぜ。出番まで休めよ」
『そうだね!帰ろう。』
そのまま私たちは席に戻った。
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そんなAと中也を見ている2つの影。
「お似合いだねぇ。ねぇ、石川さん」
「そ、そうだね、確かにお似合いだよ」
太宰は思案する。
仮にも相棒の中也の恋を、応援しない理由はない。
太宰自身、恋路を見ているのは嫌いではなかった。
あと中也をいじる要素増えるし。
だから、中也とAをくっつけようと奔走することを決めた。
(それにしても...やるじゃないか中也)
この学校において、
【好きな人に鉢巻きを結んでもらうと両想いになれる】
というジンクスがあることを、
Aはまだ、知らない。
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作者名:親子丼 | 作成日時:2018年5月9日 16時