自覚 ページ13
中也side
Aを見送り、俺は先刻から不自然な太宰に声をかけた。
「おい太宰、先刻から手前なんか変だぞ。何かあったのかよ」
「いや?何もないよ」
パッと笑顔になって手をヒラヒラさせる太宰。
俺ァ正直、太宰がAを好きなんじゃないかって思ってたんだが...
「大切な異性、なんて抽象的なお題、学校側が出すわけねぇだろ。太宰手前、仕込んでやがったな」
「流石中也。伊達に付き合いは長くないね。そうだよ、私は元々あのお題【大切な異性】と書いた紙を持っていた。」
「何でそんなことしたんだよ」
「千田さんと中也を一緒にしておきたくなかったから」
...__________っ、
先刻の記憶がフラッシュバックする。
急に開けた俺の隣。
太宰と手を繋いで走るA。
赤らんだ顔で振り返る太宰に、笑顔で応えるA。
俺だって太宰と彼奴を一緒にしておきたくなくて、石川が呼んでたなんて嘘を吐いた。
だけど、ある筈が、無い、無いんだ。
俺が彼奴を、
「...ねぇ、中也。君、千田さんの事、好きでしょ」
好き、なんて、そんなこと。
─────────────────────
ショッピングモールでAと会ったときに彼奴が云っていた本。
別れた後本屋に立ち寄り、俺もそれを買った。
凄く面白くて、直ぐに読み終えた。
「Aはああいう本が好きなのか」
と、またもや直ぐに送ったメール。
『読んだの?早いねぇ。うん、好きだよ。ああいう本だけじゃないけど、恋愛小説には憧れるよね』
返信が来て、5分ほど悩んで、返信した。
「小説みたいな恋愛が出来たらいいよな。他にAがお薦めする本とか有ったら教えてくれよ」
『分かった!じゃあ明日持っていくね!』
「ありがとう。じゃあまた明日。おやすみ」
明日が楽しみになったのは云うまでもない。
Aにおやすみと云えたことが嬉しくて嬉しくて、緩む頬を押さえながら携帯の画面をオフにした。
ショッピングモールでも感じたこの感覚。
中也君、と俺の名前を呼ぶ鈴のような声。
ちょこちょこ動く小さい身体。
少しからかってやれば染まる頬も、
いつもニコニコしている彼奴の顔も。
全部が全部、
愛おしくて。
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「あァ、そうだよ」
散々目を背けてきたが、そう、つまるところ
俺は彼奴が、好きなんだ。
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作者名:親子丼 | 作成日時:2018年5月9日 16時