類は友を呼ぶかもしれない ページ8
．
「此処…何処だろう」
紅薔薇さんと別れたは良いのだが、迷子になってしまった。
しかも周りで蒼白いのがうようよしてる。本当に何なんだ此処。
"きゃははは"
"こっちこっち"
"ね、遊ぼう"
ふよふよと辺りを浮遊する物体は、わたしに言っているのかわたしを円の中心にし、ぐるぐると行ったり来たりを繰り返す。
「貴方達は、此処が何処かわかる?」
"…"
"あはは"
誰も、答えてはくれない。一方的に喋っても、聞く耳は持ってくれない。
意思疏通の出来ない赤子と話しているような気分だ。
「き、君、そこで何をしてるの?」
おどおどとした気弱な声を掛けてくる。
一昔前の兵隊みたいなカーキ色の服を纏っている。黄緑色の目が特徴的な青年だ。
「…ま、迷子になってたんです」
「そう…
君は患者さん…かな?」
「はい、一応…」
「此処はその、立ち入り禁止だから、次からは入らないように気を付けてね
連れていくから、ついてきて…」
青年はぺたんと座り込んでいたわたしにおどおどしながらも手を差しのべる。同じくおどおどするわたしも、そっと手を取った。
「えっ、と…有難う御座います。
あの、貴方は…?」
「え……?
あ、そういえば、初めて話すね。俺は獄卒の"抹本"だよ」
「って事は…貴方が連れてきたんですか?」
「ううん、違うよ。君は…肋角さんと災藤さんが連れてきたんだ」
やはり違った。彼のようなタイプは、見ず知らずの他者をすぐに助けるほど行動派ではない筈だ。
「他の獄卒の方ですか?」
「うん、俺達の上司だよ。今丁度、災藤さんが来てる筈だけど…」
「そうなんですね。あの…所で」
かなり気になった点がある。
「?」
「手を、放してもいいですか…?」
そう、握ったまま一向に離れないのだ。家族や友人なら未だしも、初対面の相手と手を繋ぐのは相当難易度あるぞ。
「ぉひぇっ!?ご、ごごごめんっ!!」
「私子供じゃないです…」
「えっ、違うの」
「違います。これでも小学生以上だと思います、多分」
恐らくは、既に義務教育を終えた身ではないかと思う。勿論根拠は無いのだが。
「ご…ごめん」
「許しません(※怒ってない)」
「ええぇ…どうすれば…」
冗談なのに、あたふたと慌てる抹本さん。何だか小動物のような愛らしさがあって、わたしはクスリと笑みを溢した。
「そうですね…
代わりに道案内してくださいな」
「え…それでいいの?」
「…"わたし"、一人は嫌ですから」
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