入院二日目 ページ6
．
わたしはちょこんと椅子に座る。そして面接のように硬直していた。
「ははは、そんなにかしこまらなくともいい」
「は、はい……」
顔が熱くなる。少しでも冷まそうと、わたしは頬に手を添えた。
「今日の気分はどうかね」
「昨日よりは良いです…」
「それはいいことだ
さて、今日は少し包帯を取らせて貰うよ」
「え、あ…はい」
巻き付けられていた包帯がゆっくりと解かれる。
「ふむ…、視神経との結合に問題はないようだ」
「…?」
私が見た光景は、
頭巾を被った血塗れの大柄な男と
白く、嫌に眩しいほどの病室
…なのだが、
「う〜ん…」
「まだ完全ではなさそうだね」
ぼやけていて、大まかな部分しか見えない。
因みに血塗れていると判断したのは、ペンキや絵具の匂いはしなかったからだ。
「丁度良い大きさの眼球が殆ど無くてね、両方とも色が違うんだ
といっても、見えないから解らないだろうけど」
わたしは鏡に写る顔を見つめるが、ぼやっとしていて、のっぺらぼうにしか見えない。
「完全に結合すれば、交換することも可能だが……君はどうする?」
全身にぞわっ、と鳥肌が立つ。記憶には無いが、その恐怖を身体が覚えているようだ。
「むむ、無理!です!」
「即答だね」
「だ……だって、抉るんでしょう?」
「まあ…簡潔に言えばそうだね」
ならばそのままで良い。例え変だろうと、前と同じような思いはしたくない。
カーミングシグナルみたく横に頭を振る。
「そんなに激しくすると眼球が取れてしまいますよ」
「えっ
き、気をつけます……」
水銀さんに恐ろしいことを言われあわてふためくわたしを見て、先生はまた笑っている。
「その方がいい
さ、今日の診察は以上だ」
「あ、有難う御座いました。失礼します」
わたしはまだ少し眩しく感じる目を抑えながら診察室を出た。
「抹本君のような子だね」
「……そうですね」
「君もそう刺々しいと彼女が怖がってしまうよ」
「副長さんがまた来たものでしたから…」
ガチャ、とドアが開く。
来たのは、先程診察を終えた筈の彼女だった。
「すみません、忘れ物を」
「忘れ物?」
診察には持ち込む物など無い筈なのに、何を忘れたのだろうか。
「あのっ、水銀さんも有難う御座いました」
「それだけです」と少しだけはにかむ彼女は一八に手を引かれ歩いていった。
「…薬品の整理をしてきます」
「……ふふ、そうかね」
．
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