入院一日目 ページ5
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見えない為に移動が難しいので、再び独特な話し方をする女性に道案内をしてもらうことになった。
彼女は「一八」という名前らしい。
「こぉまぁぁったらぁぁ、おぉたずぅねぇぇをぉ」
「あ…はい」
手をゆっくり引かれながら、わたしはとことこと歩く。
…後々聞いたのだが、死者であるからか食事などについて特に問題は無いそうだ。しかし睡眠(仮)は必要らしい。
「ねぇねぇ、だあれ?」
ふいに空いている方の腕を掴まれた。
しかし掴まれる、という言い方は何だか合わない。それは人体や物体とは違い、気体のような違和感を持たせた。
「えっ……?
わ、わたし?」
「うん!」
その不思議なこは、機嫌の良さそうな明るい声で言った。
「…わからないんだ。ごめんね」
「そっか〜
わかるといいね」
「……うん」
「あっ、しんさつしんさつ!
おねえちゃん、またね!」
「うん、ばいばい」
人間では無いのかもしれないが、あのこと会話したことで、恐怖が和らいだ気がする。
…それにしても、何故あのこは此処に入院しているのだろうか。
うーん、とわたしが悩んでいるところ、
「ぬっ!」
「ひょわぅっ!?」
今度は何事か、足にスライムのようにひんやりした謎の粘弾性体がまとわりついてくる。
「ぬぬっ」
そして何か言っている。
うん、ちょっと日本語じゃないと解らない。
「こぉぉのぉひとはぁ、めがみえなぁぁいのでぇ」
「わっ」
「ぬっ?」
「まぁぁたぁこんどぉでぇぇ」
「ぬー」
一八さんが説得してくれたらしく、謎の粘弾…患者さんはわたしの足から離れていった。
目が見えないのはやはり不便だ。
「こぉちぃらぁわぁぁやくひぃんこぉぉでえす」
「は、はい……」
相変わらず字幕が無いと判断しづらい位の話し方だが、薬品の独特な匂いと、以前より上がった気がする聴覚により薬品庫だと解った。
「あぁちらぁのかぁぁたぁはぁまつぅもぉとぉさんでぇぇ」
「え、あの、彼方とは…?」
…というか、まつもとさんとは何をしている人だろうか。医療関係であることは確かであるが
「でぇはぁぁ、もどぉりましょぉぉ〜」
「ええっ、ちょ…」
まつもとさんの謎を残したまま、この日は強制的に病室へ戻ることになった。
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