合同任務 ページ13
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特務課の獄卒、患坂は廃ホテルを歩く。心霊スポットにでもありそうな不気味な場所だが、彼女は亡者を取り締まる者。不安も恐怖も身に纏わず、兵隊の如く勇ましく直進する。
ところが、直進していた機械みたいに正確な動きが急にピタリと停止した。
「!、誰だ」
海のように深い青色をした二つの鋭い光。
「…斬島か?」
物陰から顔を出したのは同じく特務課の獄卒、斬島だった。辺りを警戒しながらも、患坂はダガーナイフを外套へ仕舞い込んだ。
「そうだ、よく分かったな」
「…青い目が光っていたものでな
合同任務か」
「ああ、宜しく頼む」
「任務内容は理解しているな?」
「勿論だ」
「ならば、早く済ませよう」
生者を連れ回っている亡者がいるらしく、私達はそれを捜し出し対処する、というのが今回の任務内容だ。
目撃者によると、この屋敷の方角へ向かったのだと言う。
「それにしても…静かだな」
「本当に居るのか?」
ピチャン
滴り落ちる音。雨は降っていない筈だが、何処から聴こえるのだろうか。
ピチャン
患坂の顔に水滴らしきものが滴る。拭い取った腕には朱の掠れが出来ていた。
「…血か?」
「スン…
鉄臭い匂いがするな」
空気を切る音と共にやって来たのは
ッキィン!!
「ッ…」
小さなフォーク。
フォークは咄嗟に出した患坂のマチェットナイフに弾かれる。
「亡者か」
「恐らくは、
用心しろ」
ヒュヒュンッ
ヒュンッ
食事用のナイフやフォークが弾丸の様に向かって跳ぶ。二人は避けたり、弾き返したりを繰り返し進む。
「小蠅の如く煩い
これを使うぞ」
手に抱えたのは銀色に光る華奢な盆。自衛隊みたいに盆を盾にして、彼等は再び進む。
「助け、て…」
「「!」」
「あれぇ、もう来たんだ?」
暗闇で、ニタリと粘着質な笑顔を向ける者は、顔の作りは整っているので現代ではさぞかし持て囃されたのだろう。
「説得は効くのだろうか」
「手遅れじゃないか?」
「ん、ん〜?」
「そういえば今日の晩は何だ」
「鯖の味噌煮らしい。あと、焼き茄子と…」
「鯖か…楽しみだ」
御飯の事となると途端にポンコツになるこの無表情コンビ。予想外の会話に生者も亡者も目が点になる。
「ちょ、ちょっと?無視しないでくれないかなあ?そんなに余裕あるなら…
こっちからやってもいいよねぇ?」
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