ラウンダバウト・ラブストーリー 3

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高校を卒業してから数ヶ月が経った。授業を受けて、バイトをして、家では課題に取り組んで。代わり映えのしない、だけど忙しない毎日がそんな風に目まぐるしく過ぎていった。

そしてあっという間に長期休暇に入った。久しぶりに何も予定のない日ができ、コーヒーでも淹れて一息つこうかなというところで携帯がブーブーと揺れ、着信を知らせた。

ディスプレイに表示されている懐かしい名前に少し驚きながらも、ガムシロップがゆらゆら漂うコップの中をくるくるとかき混ぜながら通話ボタンをプッシュした。

『もしもし』

『うわ、Aの声聞くの、すっごい久しぶり！』

電話の先でテンションの高いことが窺えるその声は、幼馴染みのものだった。

『本当、久しぶりだね』

『本当にね！あ、そういや、なっちゃんは夏休みらしいけどAはどうなの？』

『私ももう夏休みだよ』

『そうなんだ。俺、超ナイスタイミング！』

『ん？なになに？』

『実は今日電話したのは今年の夏休みは何するかなーってこと相談したかったんだけどいい案ある？』

何気なく言っているんだろう麻也の言葉は高校生の時のことを思い出させるには十分だった。花火に肝試し。どちらもとても楽しい思い出。だけど、今思い返すには少し、苦しい。

高校生活のほとんどの思い出のなかにはカレの存在があって、今でもそれはしっかりと記憶に貼り付いて取れないらしかった。

『麻也、私、』

『ん？』

最後の最後に別れの挨拶もしなかったのは、溢れんばかりの気持ちを抑えられそうになかったから。だけど、きっと私にはそんな勇気は無かったんだろうと思う。カレには千紗がいるんだから。

気持ちを伝えなかったことに後悔はない。ただ一つ、後悔することがあるなら、それはカレと気まずいままでこちらに来てしまったということだ。

『おーい、A？』

『私……』

『ん？』

『私、篤人くんに会いたい。それでちゃんと、友達に戻りたい』

しどろもどろでやっと言ってしまうと、電話の向こうの幼なじみは"よし！"と力強く言った。

『夏休みの計画が決定しました！』

『え？』

『じゃあ日にちとか決まったらまた連絡するね』

一方的に切られた電話。それをテーブルに置いて、コップを片手にカラカラと窓を開けた。ベランダに出て空を見上げてみると、そこには当たり前のようにキラキラと瞬く星の姿があった。

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