あんスタ短編 (ページ25)

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Valentine.Izumi② ページ25

「ありがとうございます！」

(あれ、なんだろ…この感じ)

自分の心に引っ掛かりを覚えつつも、2人でラッピングをして、片付けを終えた。

「お疲れ様でした！後の戸締りはこちらでやっておきますね…。」

『ん。ありがとう。…あ、ごめん。そろそろ行かないと。…A？』

少しぼーっとしてしまっていたのか、気づけば目の前には泉さんの顔があった。

「わ！ごめんなさい！えっと…っ『はぁ…ごめん。ちょっとだけ動かないでくれる～？』…はい。」

口をつく前に気づけば泉さんに包まれていた。
(あったかい…泉さんだ…)

『…アンタはさ、素直な所が可愛いけど、物分りが良すぎるんだよね～ほんと、…寂しい思いさせて、ごめん』

ぎゅっと抱き締められた腕の中で首を振るのが精一杯の答えだった。

泉さんのお仕事に取り組む姿勢とか、絶対妥協しないとこ、ファンのお姫様たちに向けて精一杯努力して最高の状態のパフォーマンスしか見せないとこ。
自分に1番厳しいとこ。
そんな姿が好きで、惹かれた。
だから、恋人としての時間が取れなくても、泉さんの活躍をテレビやネットで見られるだけで嬉しくなる。…のに、

(さっきの、泉さんの言葉で自分が嫉妬してしまった事に気づいてしまった。)

ー俺の大切なお姫様―

今までだってそんな発言いくつもあったのに。

しばらくして、泉さんが腕を解き離れた。

『A。また仕事で向こうに飛ぶけど、アンタはなーんにも考えずに連絡、しておいでよー？』

「はい！ありがとうございます！行ってらっしゃい」

笑顔で送り出すと、頭を撫で、颯爽と部屋を出ていった。

「っ…泉さん…弱くて、ごめんなさいっ」

ｽﾄﾝとその場に崩れ落ち、気づけば頬に涙が伝っていた。

泉さんは、いつだって正しい。
今回の企画も、お仕事として、しっかりファンのお姫様の事を思って試行錯誤しながら作り上げ、お仕事の為に忙しい中帰国してくれて、またお仕事で飛んでいく。
大変なのに、嫌な顔ひとつせず努力でカバーして、それを支えるのが私の仕事なのに。

嫌だ、って思ってしまった

バレンタインなら、恋人の為に、大切な人の為に試行錯誤して作って欲しい。
いい仕事をしたって褒めて貰えたのに、傷つくのはおかしいって分かってるけど、やっぱり悲しい。

「…帰ろう。ちゃんと仕事しなきゃ顔向けすら出来ない。泉さんも頑張ってるもんね」