あんスタ短編 (ページ15)

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あの日の欠片(ジュン) ページ15

「…くん …ンくん、もう！ジュンくん！」

『…え？呼びましたか？』

「呼びましたか？じゃないね！最近ぼーっとしてる事多いんじゃない？」

後ろでおひぃさんがまだわーわー言ってるのを横目に一つため息が零れた。

あの日、俺を救ってくれたあの人の事を思い出した。

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『いっつ…畜生っ！俺は…こんな事される為にこの学校に入ったんじゃねぇ！！』

「…あの、大丈夫ですか？」

地面に突っ伏して動けない俺に手を差し伸べてくれた人。

あぁ、この学園にもまだ普通の感覚を持った人が居たんだ。

誰かも分からない人の肩を借りて近くの花壇に腰掛けた。

『あの、ありがとうございます…でも俺なんかを助けて良かったんですか…？』

「？とりあえず、これ使って血を拭いて下さい。今、手当の道具借りてきます！」

肌触りのいいハンカチを渡すと、走って行ってしまった。

『っつ…俺は、俺はアイドルになりたくて…っここに来たんだよ…！』

切れた口端を抑えながら悔しさが滲んだ。

数分経った頃、小さな箱を片手に走って戻ってきた。

「お待たせしました！出血、止まりましたか？あっ消毒しますね！じっとしててください」

『あっいや、それは自分でできますんで…って聞いてねぇ…』

顔に手を添えられ、消毒を湿らせた綿で口端の傷に恐る恐る触れた。

『…ってぇ…っ』

慣れた痛みとはいえ、痛まない訳もなく、顔を顰めた。

「ご、ごめんなさい！もうすぐで終わるので！」

それからもテキパキと手当をして最後に絆創膏を貼って蓋を閉めた。

『あの、ありがとうございました。えーっと…？？』

よく見ると、うちの制服ですら無い事に気づいた。

「いえ！数日は痛むと思うので、安静にして下さいね？傷が残らないと良いけど…ってあ！すみません！もう行かないと！失礼します！」

ふわりと微笑んだ彼女は、時計を見るなり慌てて立ち上がった。

『え、ちょっと、せめて名前だけでも教えてくれませんかねぇ？』

手を取り見上げると、少し思案して、

「君、ここの学生って事はアイドル志望ですか？だったらーーーで！失礼します。」

ペコっと頭を下げて走って言ってしまった。

『て、結局名前すら聞けてねぇじゃねーかよ、俺』

--それから半月も経たないうちに、おひぃさんとの出会いがあり、今は、Eveとして、Edenの漣ジュンとして、名をあげる位に成長した。

最近になるまで忘れていたあの過去の出来事。

(あの時、彼女は結局なんて言ってたんだっけ…)