君の名を呼ぶ (ページ5)

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　翌朝、目覚ましより早く目が覚めてしまった私は、ほんの少し睡眠不足のダルさと戦いながら着替えを済ませると、メイドルームを出た。今、お屋敷に住み込みのメイドは私だけで、以前はこの部屋の住人だったメイド長のうびさんは、近くのワンルームマンションを借りて、そこから毎日通っている、この道50年のベテランメイドさん。なのに、朝は一番早いからさすがメイド長って毎朝感心してしまう。他のメイドさんも通いの人が大半なので、朝一番の朝食の準備はメイド長と二人のことが多い。

「おはようございます」

　キッチンへ行くと、もうメイド長が朝の準備を始めていて、慌ててその隣へ並ぶ。

「おはよう、今日は早いじゃないか」
「ちょっと早く目が覚めてしまって……」
「眠そうだね」
「あは……すみません」
「いや、夕べ最後の仕事押し付けちゃったからね」

　問題なかったかい？なんて言われて、夕べの悪戯な北斗さんを思い出して胸がドキンとした。

「……A？」
「あ、ハイ」
「……何かあった顔かい？」
「いえ、何でもありません」
「まぁ、ならいいけど」

　深追いされずにホッとしたのも束の間、

「坊ちゃんのお部屋から、食器類は下げてないんだね？」

と、カップボードの空いたままのスペースに目をやったメイド長に、

「あ、朝のうちに回収に伺いますとはお伝えしてあります」
「遅い時間だったから仕方ないにしても、なるべく食器類はこっちに引き上げておくようにしなさい」

すみません、と頭を下げると、

「ねぇ、うびさんその辺にしてあげて」

と背後から穏やかな声が聞こえて、メイド長と二人揃ってそちらに視線を向けた。