君の名を呼ぶ (ページ19)

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　着替えに向かったメイド長を見送ると、二階の北斗さんのお部屋へ向かう。少しでも早く一人前のメイドとして認めて頂けるように、しっかりしなくちゃ。
　うん、と気合いを入れて階段を登っていくと、そこに大きな人影があるのが見えた。

「ジェシーさん？」

　壁に背中を預けて手元のスマートフォンを操作していたジェシーさんが、わたしの声に顔を上げると、ニコリと笑った。

「Aちゃーん」
「どうかなさいましたか？」
「ううん、待ってた」

　うびさん来たらどうしようかと思ったよ、なんて笑うジェシーさんに、

「メイド長は今日はもう、」

と言いかけた私の言葉を遮って、ジェシーさんの影がゆらりと動いた。

「なら、」

　階段を登りきるのを遮るみたいに、数段上のジェシーさんが文字通り私を見下ろしている。ただでさえ背の高いジェシーさんがさらに階段分高い場所にいるから、威圧感が半端ない。

「チャンスじゃん？」

　そう言ったジェシーさんは、ゆっくりと一段ずつ、階段を降りてくる。私と同じ段に並んだかと思えばそこからもう一段降りると、

「これで一緒ぐらい？」

と、私の方を見て笑った。確かに……今はいつも見上げるジェシーさんと、視線が同じくらいの高さだ。

「何か、ちょうど良くない？」
「ちょうど……？」
「うん」

　ほら、と囁いたのと同時にジェシーさんの顔が近づいてくる。瞬きをするよりも早く耳たぶがそわりとして、思わず身体がビクッと跳ねた。何が起こったのかわからずに固まっている私の耳元でクスクス笑うジェシーさんの声が聞こえた。