君の名を呼ぶ (ページ13)

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「今日は？デザート何？」

　そんな私に助け船を出すみたいに、ジェシーさんが私の顔を覗き込んで言った。

「今日……は、カマンベールのバスクチーズケーキにしました」
「うえっ！美ン味そう！」
「ジェシーさんがスパークリングワインを選んで下さったので、ブリーチーズが手に入ればよかったんですが……」
「まぁでも、カマンベールも美味いもんね。おんなじ白カビだし！」

　AHAHA！と陽気に笑うジェシーさんに、今日買ってきた新しいクランベリージャムを添えてチーズケーキを切り分けると、待ちきれないといった表情で、ジェシーさんはフォークとナイフを手に取った。

「んー、美味そうー……」
「いいよ、ジェシー。さっき食っちゃえば」
「まぁじで！？……いやでも、北斗の準備出来るまで待つ」

　一旦手に取ったカトラリーを置いてから、目を閉じたジェシーさんはふぅと深く息を吐く。

「何やってんの？」
「統一集中。……ん？集中統一？」
「あは、精神統一な？」
「だっは、そーれ！」

　いつもみたいに陽気な会話を弾ませながらたまに大きな口を開けて笑うお二人を見ていると、本当に普通の男の子だと思う。

「お待たせ致しました」

　どうぞ、と北斗さんの前にチーズケーキの乗ったお皿を差し出せば、

「ありがとう」

って、見上げた北斗さんが優しく微笑んだ。そのあたたかさに、懲りずに私の胸はトンと跳ねる。
　こういうことが、日常であれば。

「よし、頂きます！」

　ほんの一瞬北斗さんと見つめ合ったような気がして、でもジェシーさんの声に現実に引き戻される。

「失礼します、ごゆっくりどうぞ」

　一歩下がって頭を下げると、早々にその場を後にした。背中越しに北斗さんの視線を感じた気がしたのは、多分私の思い過ごしだと思う。