魂のたべもの (ページ3)

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Aちゃんとは、実は結構昔からの知り合い。十年くらい……かな？
　俺とAちゃんが知り合った頃、彼女はアイドルの卵で、ファッション誌のモデルをやったり、ティーン向けのバラエティ番組にチョイ役で出たりしていた。まだJr.の頃、SixTONESを結成前の樹やジェシーが出ていた番組で競演していて、その後六人でバカレアに出演する事になって、Aちゃんは女子生徒役で時々撮影にも参加していた。その頃、実は今程コミュ力オバケじゃなかったジェシーとは時々話し込んだりしていたAちゃんが、引退するって聞いたのは、五年くらい前。

「Aちゃん、仕事辞めるんだって」

　番組の大部屋の楽屋で他のJr.のメンバーがワイワイと賑やかな中、ジェシーが鏡の前でヘアセットをしている俺の後ろにパイプ椅子を持ってきて、そこへちょこんと腰掛けた。

「え……マジ？何で？」
「んー……何か、もう大学卒業なんだって。将来のこと考えてって言ってた」
「そう……なん」

　その時は、Aちゃんがこの業界を去る寂しさよりも、それをジェシーが知ってることに軽いショックを受けたのを覚えてる。二人でどこかへ行ったりとかは無かったと思ってたけど、そんな大事な話をするくらいには、二人の距離は近かったんだなって。

「今度会う約束したけど……慎太郎、何か伝言ある？」

　それは、ジェシーなりの優しさだったんだと思う。でも、大事なことは自分で言うよって変なプライドが邪魔をして、

「いや、別に何もない」

そう言って、鏡に向き直った。
　結果、それが俺の人生の最大の失敗だったって知るのは、もう少し後の話。