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パトカーの騒々しい音が、夜の街を駆け巡っている。
気を失ってしまった男を放り出したまま、店内のセキュリティシムテムを作動させた俺は、Aちゃんの身体を抱き上げて店を出た。
すぐに警備会社から人が来て、倒れ込んでいる男は強盗か何かだと警察に突き出されるだろうし、そいつがAちゃんのストーカーだってことも、少し調べればわかるだろう。
床に落ちた傷の痕も調べられるだろうけど、それがAちゃんのものと一致することはない。
俺がAちゃんを噛んだから、Aちゃんの身体に流れるのは人間とそれは違うモノになってしまったヴァンパイアの血。
「ゴメン、掴まっててね」
そう言って、持ってきていたヘルメットをAちゃんの頭に乗せると、彼女の両腕を俺の腰にまわしてから、脱がせたAちゃんのブラウスでギュッと一纏めに縛った。
もしも、高速が渋滞しててもすり抜けられるようにってバイクで来たけど、車にすればよかったなんて今更呑気に考える。でも、とにかくAちゃんの身体が休めるようにと、ゆっくりとした運転で俺の部屋へ向かった。
都内の俺の部屋へ着く頃には、Aちゃんの手の力が随分戻っていた。俺の腰に回して固定した腕は無意識に俺にしがみついていたし、背中に感じるAちゃんの息遣いも、安定していた。
マジ、今日が満月で良かった。
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作者名:ubisi | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122
作成日時:2023年7月27日 19時