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その姿に、ドクンと胸が響いて、喉がゴクリと鳴った。
 店中に充満していたのは、紛れもないAちゃんの血の香り。さっきの男の手の中の、銀色の先の鈍い錆がAちゃんのものだと直ぐに気がついて、奥歯の更に奥が疼いて頭にガッと熱が走った。
 Aちゃんの身体を一度床へ寝かせてから立ち上がって、気を失ったままの男の身体の側まで行くと、それを見下ろしながらドカンと蹴っ飛ばす。このまま粉々になるまで踏んづけて蹴っ飛ばして、塵みたいにしてやりたい衝動に駆られたけど、

「しんたろ……くん、」

とか細いAちゃんの声が耳に届いて、俺はすぐにAちゃんの側へ駆け寄った。

「Aちゃん!」
「よか……来て、くれた……」
「うん、安心して。俺が来たから、そばにいるから」
「ジェ、シー……く、ん」

 Aちゃんの瞼が、ゆっくりと落ちていく。
 その目に映っているのは俺なはずなのに。
 Aちゃんは最後にジェシーの名前を呼んで、その目を閉じようとしている。

 そんなこと、させるもんか。

「A……!」

 そのまま、半開きのAちゃんの唇にキスをする。少しでも、このヴァンパイアの力をAちゃんに与えられたら……これがAちゃんの最期になってしまうなんてそんなの、絶対に嫌だ。

「ん……ンン、」

 人工呼吸の真似事みたいに重ねた唇は、血の香りと、満月の力で俺を暴走させる。どんどん深くなる口付けは最早延命ではなくて、単純なくらい、欲望塗れのキスになっていった。ぬるりと滑り込ませた舌でAちゃんを探せば、クッとAちゃんの舌が反応した。ひく、と動いた手がゆっくりと動いて、そのまま俺のTシャツを掴む。さっきより、力が篭っている気がした。
 ゆっくりと唇を離すと、Aちゃんの呼吸は少し早くなっていた。ハァハァと肩を揺らしたAちゃんはゆっくりと目を開くと、

「……慎太郎、くん」

と、少し寂しそうに俺の名前を呼んだ。

「Aちゃん……もう大丈夫だから」
「慎……た、」
「俺がいるから……俺がずっとそばにいるから……守るから」

 今君の目に映るのが、ジェシーじゃなくて。
 君の想いを叶えてあげられなくて。
 ジェシーにはもう『番』がいること黙ってて。


「……ゴメンね」


 そう呟いて、俺はAちゃんの首筋に牙を立てた。

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作者名:ubisi | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122  
作成日時:2023年7月27日 19時

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