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あはははは!と狂気じみた笑い声を上げた男のベルトが外れていて、前がだらしなく開いたズボンが膝までずり落ちるのを見た瞬間、俺の中の理性の糸が切れた音がした。ズンと赤く光る俺の瞳が残像のように糸を引いて、それに怯んだ男の方へ、俺は一気に距離を詰めて近づいた。俺の動きに当然ついてこれない男の懐へ踏み込んで、
「満月で良かったわ、五感がビンビンだ」
そう言えば、
「な……ん、だお前……バケモンかよ!?」
と、男は震えながら、両手で掴んだ銀の切っ先を俺に向けた。でも、そんなに震えて一体何が出来るって言うんだ。
「うるせぇな、黙れ」
そう言って男の首に右手をかけると、俺はそのままグッとその身体を持ち上げた。
「ぐ……ぎ、ぁあ……っ」
「Aちゃんはお前のものなんかじゃねぇよ」
「は……なせ、っが……は、」
苦しそうにもがきながら俺の手を離そうと、男は俺の手首を掴む。でも、そのあまりにも非力な抵抗は、何の役にも立っていない。そのうち、悪あがきの力も抜けた男の手から凶器が零れ落ちて、俺の手首を掴んでいた手もダラリと落ちる。足元に転がったそれを遠くまで蹴飛ばすと、俺は更に手に力を込めた。
「離せ?誰に向かって言ってんだよ?お前の命が、今誰の手の中にあるのかわかってんの?」
「う……ううっ」
「……殺すぞ」
「やめ……助け、て……タスケテクダサ……うぐっ」
ヒクヒクと、手足の先が痙攣し始めた男の口元がだらしなく開いて、その端からだらりと唾液が零れる。それが俺の手を汚してしまう前に男をポイとゴミのように投げ捨てると、ゴツンと床に転がった男は苦しげに何かを呻いていた。
そんなモノは放っておいて、俺は床に倒れ込んだままのAちゃんの身体を抱き上げた。
「Aちゃん……!?しっかり!!」
「しん……たろ、くん……」
「そう、俺だよ、慎太郎!!」
抱き起こしたAちゃんの身体は少し冷たくて、手にペタリとした感触がして目を見張る。お腹を押さえるAちゃんの両手は思っているより力が入っていなくて、そこが赤く染まっているのに気がついた。
「Aちゃん……」
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作者名:ubisi | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122
作成日時:2023年7月27日 19時