魂のたべもの (ページ14)

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音の聞こえた方へ反射的に顔を向けるとそこはカウンターで、ゆっくりと、でもコツコツと音を立てながらカウンターへ近寄った。
　いつも俺が座る席。その隣の席にはジェシーが座るけど、そこにAちゃんのスマホだけが置き去りにされていた。その奥から、店内に満ちる香りが一際強く漂っていた。
　そこだ、と確信すると、もう身体が勝手に動いていた。
　カウンターテーブルに手を着くと、ひょいとそれを飛び越える。尋常じゃないジャンプ力も、今日この夜だからこそだ。

「来るな……っ！！」

　カウンターの内側へ着地すると、そこには予想通りAちゃんがいた。けど、Aちゃんの姿は俺の想像とは全然違ってた。

「A……ちゃん……？」
「何だまたお前かよ！何なんだよお前まで！！」

　そう喚き散らしているのは見かけない男で、その男が俺に向けた手の中には、ギラリと不気味な鈍い光。
　強い香り。男の足元に転がっているのがAちゃんの身体だと気がつくのはすぐで、Aちゃんは薄暗い店内でもぐったりとしているのが気配でわかった。

「Aちゃん！！」
「来るな！」

　俺を睨みつけながらしゃがみ込んだそいつは、Aちゃんの身体を抱きかかえた。手の中のソレはずっと俺に向けながらも、それでもその手はブルブルと震えている。

「お前……Aちゃんに何した？」
「うるさい、お前には関係ない！」
「何したって……聞いてんだ」

　震える声を張り上げながらも、男の額には汗がダラダラ流れている。
　少しずつ男に近づくと窓からの月明かりに男の顔が照らされて、そこで俺は、その男が何者なのかに気がついた。

「お前……昼間の、」

　昼間店を出る時に、大通りに出る前にぶつかりそうになった男だ。もしかして、ずっとあの時から、店に押し入るのを狙ってたのか？

「Aちゃんを離せよ」
「うるさい、出ていけ！お前も、アイツも……お前らこそ出ていけ！」

　アイツ？お前ら？

「……ジェシーのこと？」
「何だよ、いつまでもAにまとわりつきやがって……目障りなんだよ！」

　叫びながら、男はAちゃんの身体をギューッと抱きしめた。

「やめろよ……お前こそ、Aちゃんのこと離せ」
「うるさいうるさいうるさい！やっと俺のものになるんだ、Aは俺のものなんだよ！失せろ！」