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お店の休憩時間が残り少なくなって、さすがにAちゃんも休憩と夜の準備があるから、俺もお店を出ることにした。
「また来んね」
そう言った俺に小さく頷いたAちゃんは、
「慎太郎くん、」
と、何時になく頼りなさげな声で俺を呼んだ。
「ん？」
「あの……実はね、」
「どしたん？」
なるべく冷静を装ったのは、ほんの少しだけ何かを期待したから。でも、振り向いて見つめたAちゃんの表情からはそんな淡い期待なんか微塵も感じ取れなくて、勝手に持ち上げた肩を落としたのと同時に、Aちゃんの表情に違和感を感じた。
何……だろう？
「Aちゃん？」
「……ううん、何でも。ゴメンね遠いのにわざわざ」
「いんや、別に遠くないやん。気にしないのよ？」
元気出して、とAちゃんの腕をポンと軽く叩けば、Aちゃんはようやく俯きがちな顔を上げて、小さく笑って頷いた。
「じゃあ……また」
「うん。お仕事頑張って」
バイバイ、と胸の前で手を振ったAちゃんが店に入って、カチャリと施錠する音を確認してから、俺もくるりと向きを変える。呼んだタクシーは大通りまで来ているはずで、振り返って駆け出そうとした時、ふっと俺の前を横切った人と肩がぶつかりそうになった。反射的に身体を躱したけど、肩の先が少し掠めるように触れてしまった。
「わ……っと、すみません！大丈夫ですか！？」
お互いコケたりはしなかったけど、よろりと体勢を崩した相手に咄嗟に手を差し伸べると、
「大丈夫です、」
と、すっと身体を引かれた。そのまま、その人はまた大通りの人混みへと紛れて行ってしまって、俺は何だかわからないままモヤモヤしたモノを胸に抱えながら、到着していたタクシーに飛び乗った。
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作者名：ubisi
| 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122
作成日時：2023年7月27日 19時
