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「……A？」
いつの間にかベッドへ腰掛けていたジェシーが、立ち呆けている私を見上げて手を差し伸べた。
「おいでよ」
その一言だけで胸が跳ね上がるのに、私はジェシーの手を取らずに、少し間隔を開けてベッドへ腰掛けた。
「……やっぱり、元気ないね？」
「そんなことないよ」
「嘘だぁ。俺の知ってるAは、もっと明るく笑うヒトだよ？」
「……じゃあ、そういう風に飾ってたんだよ。ホントの私は……」
本当の私はこんなにも卑屈で浅ましくて、灰を被ったような薄汚さだ。そんな私が、ジェシーの隣に並ぶなんて。
「嘘だって……そんなことない」
ジェシーの右手がベッドへ付いて、ギシッと音が鳴った。そのまま、私の顔を覗き込んだジェシーは、
「……そんな泣きそうな顔してまで、嘘つかないで」
と、左の手で私の頬を撫でた。
「ジェシー……」
「俺が……Aを悲しくさせてる？」
悲しそうに眉を下げるジェシーに、目いっぱい首を振る。それにホッとしたように表情を弛めたジェシーは、
「何にもしないよ？」
と、微笑んだ。
「何、にもって……」
「レンタルされてデートの最後にこういうところに来たからって、何もしないよ」
そう言って、少し難しそうに笑ったジェシーは、
「……眠れないんだって」
と呟いた。
「……さっき一緒にいた、お客様？」
「そ。ひとりじゃ眠れないって。眠れないと身体に堪えるでしょ？誰か側にいてくれたら眠れるからって、時々俺が呼ばれるの」
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作者名：ubisi
| 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122
作成日時：2023年6月6日 1時
