▼ ページ25
「ジェシー……？」
幻かと思ったけれど、間違いなくそこにいたのはジェシーだった。
いつもよりは少しきっちり目のスーツに身を包んだジェシーは、いつもに増してスタイルが映える分、どこか近寄り難さも纏っているように思えた。
一瞬私を横目で見てから、彼の肩を掴んで後ろへ引いて、私から引き剥がしたジェシーに、
「は？何だよお前？」
と彼は尤もな言葉を投げた。
「お前こそ、俺の彼女に何するつもり？」
ジェシーの言葉にあからさまにムッとしてから、
「は？お前、何言って……」
鼻で笑うようにジェシーを見上げた彼に、
「Aは、俺の彼女！」
そう言って、彼の腕を掴んだジェシーは、
「触るな」
と、聞いたことも無い唸るような声を出した。いつものジェシーからは想像もつかないような足元を走るようなその声に、私の身体もぶるっと震えた。それでも、彼は足掻くようにジェシーの手を振り払うと、
「おい……っ！！」
とジェシーを睨み返す。それでもジェシーは怯むことさえなく、
「金でJK買うようなゴミが、汚い手でAに触んじゃねぇよ」
と、信じられないくらい冷たい声でそう言って、蔑むように彼を見下ろした。
「な……っ！！」
「反論あるなら、聞きます」
「反論……って、クソ！」
それ以上は感情的になる価値すら無いといったジェシーの態度は、まるで彼のことなんて眼中に無いとでも言いたげで、
「無いなら帰って下さい」
と、身体の向きを変えると、
「どうぞ」
と、エスコートするみたいに、自分の後ろへ促すように手を差し出した。
「A……」
縋るように私を振り返った彼に、
「あと、二度とAの前に現れないで。気安く名前も呼ばないで。電話もLINEもしないで。同じ空気吸わないで」
と追い討ちをかけるジェシー。思わず、
「ジェシー……！！」
とジェシーを引き止めたけれど、ジェシーはそんな私の事なんか気にも止めずに彼に歩み寄ると、彼の耳元にグッと顔を近づけて、
「Kiss……my ass」
そう囁いてニヤリと笑った。その、まるでヴィランのような悪意あるジェシーの微笑みに、背中がゾクリとした私はそのまま一歩も動けずにいて、妖しげなジェシーの言葉に声を詰まらせたまま、彼は何も言わずにその場を立ち去っていってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 567人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ubisi
| 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122
作成日時：2023年6月6日 1時
