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「俺、Aの彼氏なのに？」
ジェシーはショーケースに両肘をついて私の顔を覗き込む。優しくて、でも品のある艶やかなオーラを零しながら、ジェシーは左手を伸ばすと、
「それに……Aのココ、寂しそうだし」
と、私の首にピタリと手を当てた。喉元に、ジェシーの手の温もりと、中指に嵌められたボリュームある指輪の冷たさが直接伝わって、無意識に身体が小さく震えてしまった。
いつも付けていたネックレスは元カレに貰ったものだったから、別れたあの日から付けていない。そう言えば、自分のためにアクセサリーを買うこともここ数年無かったから、元カレのネックレスを外してしまってからそこは、しばらく無防備なままだった。
「Aの寂しいの、埋めてあげる為に俺がいるのに」
ジェシーの指の背が、私の首筋を優しく滑るように撫でた。まだ明るい店内で突然突きつけられた扇情的な温度が、私の身体を支配しようとしている。
「それは……今だけ、だし」
苦し紛れにそう言っても、身体がジェシーの手を拒めずにいると、
「……だから、それ以外の時間も俺のこと忘れないで欲しいって思ってるんだけど」
と、首筋に添えられたジェシーの親指に、ほんの少しだけ力がこもったのを感じた。まるで、何かの意志をそこから流し込むみたいに押し付けられた指の感触は、やがてふわりと力が抜けたと思えばそのまま何度かそこを柔く撫で始めて、
「ジェ、シー……」
喉に詰まった声でジェシーを呼べば、ジェシーはニコリと笑って手を離した。途端に、首筋がすぅっと寒くなる。
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作者名：ubisi
| 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/ubisi_0122
作成日時：2023年6月6日 1時
