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「あ…じゃあ、茅野」

先生が見つめていた生徒は、茅野だった。
………え?茅野は、突然の指名に驚きの声を上げた。

「学級委員だし、丁度いいだろ」
「丁度いいって何がですか?!全然丁度良くないです!嫌です!絶対嫌!!」

先生の告げた指名理由に、茅野は全力で否定した。
茅野の全力の否定、気持ちは分かる。
俺だって、嫌だもん。
何せ、回答を間違えれば誰かの命を奪ってしまう。
そんなの、恐怖以外の何物でもない。

「じゃあ、ギブアップする?その場合、誰かひとり死んじゃうけど…」

脅しの言葉。
茅野を追い詰めるには、充分な言葉。
……そんな…。茅野は、絶望とも取れる表情で呟いた。
そんなやり取りに痺れを切らした甲斐が叫んだ。

「巫山戯んなよ!こんな茶番…付き合ってられるか!!」

言葉と同時に甲斐は、椅子を持ち上げ、其れを力任せに窓に投げつけた。
椅子を投げつけた窓は割れることなく、勢い良く跳ね返り、俺の方へと流れ弾如く飛んできた。
急な事に、咄嗟に席から離れるなんて判断が出来る訳なく、辛うじて出た左腕で防御体制を取った。
無傷…。なんて事はなく、椅子をしっかりと左腕に受けたし、結構痛い、ジンジンする。

「その窓は強化ガラスだから割れないよ。それに、巫山戯てないし…茶番でもない。


この半年間、俺はこの日のためだけに過ごしてきたんだからな」

先生の目は、凄く冷めていた。
けど、口角は上がっていて。
今まで見た事がない表情だった。
初めて…初めて先生を怖いと思った瞬間だった。


…それじゃあ、皆で話し合ってもらおうか。冷めた目をした先生はもうそこにはなく、いつもの表情をした先生が言う。

「俺は美術室に居るから。あ、佐藤。お前もちょっと美術室に来い」
「………………え」

言い捨てるように告げた先生は、回収した携帯電話と鞄の入った袋を持って、教室を出ようとする。
そこに、待ったをかけるように逢沢が先生に問うた。

「さっきの話……。もし、景山の自 殺の原因がこのクラスの誰かだったら…そいつはどうなるんですか」
「そうだなぁ……。それなりの裁きは受けてもらうかな」

淡々と先生は答えた。
そして指を額に当てて軽く二度叩き、無駄に良い発音で先生は言い放った。





























「Let's think!」

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作者名:字の人 | 作成日時:2022年6月15日 0時

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