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時間は過ぎ、今は夜の8時前。
一颯君は、ノートパソコンでSNS___マインドボイスに投稿されている“声”を見ていた。
俺も一緒に、画面を見ているが、胸糞悪い“声”が幾つも流れていた。
そんな投稿を眺め、一颯君はニヤリと口角を上げた。
「盛り上がってきたねぇ」
「…気持ち悪い」
「お前、ホントこういうの駄目だな」
「うん、なんか無理」
そんな会話をしながら、一颯君は薬を飲み、俺はノートパソコンの画面に向かって、ベェっと舌を出した。
そんな俺を見ながら、…あ、そうだ。と一颯君は何かを思い出したかのように、声を出した。
「黎、今回はお前も教室に行くぞ」
「…は？え？何で？」
「何ででも、だ。ほら、もうすぐ8時だ。行くぞ」
「え！あっ、ちょっ…」
詳しい理由を聞かされないまま、手を引かれ、約2日ぶりに教室へ向かう。
教室の扉を開くと、後ろから背中を押され、前のめりに教室へと入室した。
体勢を立て直し、クラスメイトの方へ視線を向ける。
全員の視線が注がれており、非常に気まづい。
一颯君に、早く席に座れ。と急かされ、自席へと向かう。
その間も、全員からの視線は痛い程感じる。
甲斐の横を通り過ぎる際、少し掠れた声で、…お前。と、睨まれた。
多分だが、今まで何してたんだ。的な意味合いが含まれているだろう。
「ごめんね、心配掛けて。大丈夫だよ」
睨みに対して、一応、謝っておいた。
そうすれば、甲斐は溜息を吐いた。
何で？
まぁ、いいか。と思いながら、やっと自席に腰を下ろす。
腰を下ろしたタイミングで、一颯君は言葉を紡ぐ。
「さぁ、そろそろタイムリミットだ。…まずは、僅かな可能性に賭けて、フェイク動画を撮った人！！」
そう声を張りながら、手を挙げる仕草をする一颯君。
勿論、その問いに対して、手を挙げて応える物は居ない。
一颯君は挙げていた手を握り、そのまま教壇を1度叩いた。
そして、言葉を続ける。
「仕方ない。じゃあ、刑事さんに当ててもらおうか。…刑事さん、分かりましたか？」
一颯君は、教壇に置いた携帯電話に声を掛けた。
耳に当てず声を掛けた所を見るに、通話はスピーカーで繋がっているのだろう。
一颯君の問いに答えるように、携帯電話から声が響いた。
《あぁ。直前まで迷ったけどもな》
「因みに、誰で迷ったんですか？」
《熊沢花恋と、里見海斗だ》
「へぇ。里見とは、また意外ですね」
刑事さんの言葉に、クラスメイトの視線が、里見へと集まる。
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作者名：字の人 | 作成日時：2022年6月15日 0時
