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ニヤニヤニヤニヤ。
自分の思い描いた回答が返ってきたからなのか、顔がうるさい先生……一颯君は、満足したのか、またノートパソコンへ向き合った。
先程観ていた特撮から、また映像が変わった。
映っているのは、他校のヤンキーが魁皇高校の生徒に絡んでいる映像だ。
…逢沢、こんな所も撮ってたんだ。
この時の事は、良く覚えている。
「この時、お前も巻き込まれてたな」
流れる映像をボーッとしながら観ていたところに、一颯君の声が掛かる。
「巻き込まれたってか、自ら突っ込んで行った方かな」
「…傷、残ってるんだろう?」
「うーん…まぁ。けど、小さいし、そんな気にならんよ」
「そうか」
映像の時期に起こった事、それは景山の悪質なファンに真壁が絡まれ、警察沙汰になった出来事だ。
真壁が景山の彼氏と勘違いされボコボコにされていた所に、たまたま通りかかり突っ込んで行ったのは良いが、俺も喧嘩なんて全くの素人で返り討ちに合い、オマケと言わんばかりの跡が残るような大怪我を2人で負った。
俺は、背中に怪我を負い、日常生活にほんの少しだけ期間限定の支障があっただけだが、真壁は、足に怪我を負い、泳ぐ事が出来なくなった、選手生命を断たれたのだ。
この出来事は多分、忘れたくても忘れられない、そんな出来事になった。
一颯君はその後も、幾つかの映像を観ていた。
真壁の選手生命を断たれた事を巡って、関係性が変わってしまった景山と熊沢の映像。
そして、相手は死角になっており見えないが、景山が誰かに告白されている映像。
…景山の告白相手、誰だろう、気になる。
何処かで聞いたような声だなぁ。と、呑気に考えていた。
ふと、モニターを見ると、茅野と宇佐美が丁度、教室を出て行く所だった。
残念ながら、廊下には監視カメラが仕掛けられていない為、どこに行くのかは分からない。
数分の後、教室に諏訪の声が響いた。
『里見ぃ!アンタ、疑われてるよ?』
『あん?』
里見は、声が聞こえた方へ顔を向けた。
茅野は背中を押され、里見の前に差し出された。
クラスメイト全員の視線が、茅野へと注がれる。
…聞かせてよ、名推理。と、煽るような声が聞こえる。
それに応えるように、茅野は里見へ向けて言葉を放った。
『……いや、全国大会の会場に居たよね。観客席に。…ジャージ着て』
茅野の発言に、…どういう事だよ。と、須永が里見へ問いかけた。
里見は答えない。
そこへ、何かを思い出したかのように、真壁が口を開いた。
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作者名:字の人 | 作成日時:2022年6月15日 0時