3月3日 ページ42
今日も俺は、飽きずに美術準備室に居る。
先生は、さっき教室へ向かった。
それを見送り、定位置になろうとしているモニター前の椅子へと腰掛けた。
それと同時に、チャイムが鳴る。
教室が映るモニターを見ると、挨拶が終わり、クラスメイトは着席、先生はカーテンを閉めている。
会話が聞こえるように、スピーカーの音量を上げる。
『早いとこ真実を掴まないとな。じゃあ早速だが、今日の課題を発表しまーす。茅野、電気を消してくれ』
電気のスイッチに1番近い席の茅野が、指名され消しに行く。
電気が消えた教室は、カーテンに遮られてると言えど、多少陽の光が入り、真っ暗……とは言えないが、そこそこの暗さになった。
黒板に映し出される1つの動画。
『これは、ドーピング疑惑に使われたフェイク動画だ。……この動画を、SNSに投稿したのは、宇佐美だ。だが、撮影したのは、別の誰かだった』
『どうだか…。罪を軽くする為の、言い逃れじゃねぇの？』
甲斐は、先生の言葉に否定的な言葉を投げた。
そんな甲斐を、はぁ？と小さな声を漏らし、宇佐美は睨む。
甲斐の言葉に、先生は答える。
『宇佐美が言っていることは、本当だ。フェイク動画を撮った生徒は、この中に居る』
『先生は、誰か知ってるんですか？』
『大体の目星は、ついてる』
茅野からの問いに、肯定で返す先生。
先生は、言葉を続ける。
『さあ、動画を撮った人。正直に、手を、あーげーてー！』
そう言いながら、手を挙げる先生。
分かっていた事だが、誰の手も挙がらない。
少しの沈黙が、教室を支配した。
…挙げる訳ねぇだろ！！と沈黙を破り、声を張る兵頭。
兵頭の言葉に、先生は口を開く。
『じゃあ、動画を撮った生徒を、見つけないとな』
ワントーン低くなった、先生の声。
俺は、その声に少しだけ恐怖を感じた。
1人ビクついてる中、魚住が先生へ問い掛ける。
『見つけるってどうやって……』
『昔から犯人探しは、お巡りさんの仕事だと決まっている』
言い終わると同時に、教壇に置いていた携帯に触れる先生。
それをそのまま耳元へ持っていき、電話を始めた。
『と、言う訳で。今の話、聞いてましたか？郡司真人警部補。これから、問題のフェイク動画を貴方の携帯に送ります。その動画の、撮影者を捜してください。タイムリミットは、夜の8時。見事、犯人を当てる事が出来たら、全員を、解放しましょう。但し、間違えたら、クラスから犠牲者が出ます』
電話の相手は、思いもよらない刑事さんだった。
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作者名：字の人 | 作成日時：2022年6月15日 0時
