・ ページ41
「黎、眠いなら無理せずに寝ろ」
「…………ん。…ねむく、ない」
「何でそこで、嘘つくんだ……。ほら」
先生は俺の腕を引っ張り、椅子から立たせた。
そしてそのまま、朝寝ていた場所に誘導される。
俺は睡魔が限界にあり、抵抗せずにそのまま横になった。
クラスメイトが教室の床で雑魚寝をしていて、キツそうと思ったが、俺も同じく床での睡眠の為、キツさは変わらない。
貰った毛布にくるまり、目を閉じる。
明日も身体は、バキバキなんだろうなぁ。
そんな他人事みたいな、思考回路ともう1つ。
「お休み、黎」
俺の頭を撫でながら紡がれた先生の声を最後に、俺は意識を手放した。
･
･
ふと、目が覚めた。
ここには時計が無いし、いつも時計代わりにしている携帯電話も無い。
その為、今が何時か分からない。
俺はゆっくりと、身体を起こした。
身体がバキバキだ。
鳩尾辺りは少しの違和感だけで、激しい痛みはもうない。
忘れているかと思うが、椅子がぶつかった腕も腫れは引いたが、まだ少し痛む。
掌は、出血は止まっているが、少しでも動かすとかなりの鈍痛が走る。
掌を眺めていると、頭の上から声が降ってくる。
「あれ？何だ、もう起きたのか？」
「……今、何時？」
「まだ夜中の3時だ。どうした？」
「なんか……起きた」
「ふっ。何だそれ」
先生は軽く笑うと、俺の頭を撫でた。
先生の顔を、見る。
何だか、顔色が悪い。
俺は、先生の頬に手を添えた。
「…痛い？薬は飲んだ？……俺が寝てから、寝たの？」
「質問ばっかりだな。薬は飲んだ、痛くないよ。お前が寝てから、少し横になった。だから、大丈夫だ」
「でも顔色、悪い。ちゃんと寝なきゃダメだろ。まだ、何かやるの？」
「いや、特には。やる事ないし、モニターでも見ようかと思っていたところだ」
「……じゃあ、一緒に寝よ」
そう言って、俺は先生の腕を掴み、引っ張った。
おいっ！と、言う先生の言葉は無視。
先生は体勢を崩し、そのまま床に寝転がった。
先程まで使っていた毛布の半分を先生に掛け、もう半分を自分に掛けた。
「一緒に寝るのとか、何時ぶりだろ…」
「お前が高校に上がってから、一度もないな」
「だね…。はぁ、暖かい」
「暖かいな。久しぶりに気持ち良く眠れそうだ」
「…ん、良かった。………おやすみ…せんせ……」
「ん。おやすみ」
俺の頭を撫でる先生の手の温もりを感じながら、俺はもう一度、意識を手放した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 93人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：字の人 | 作成日時：2022年6月15日 0時
