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「今後、生きていく上で邪魔になると思ってな」
...なーんて、冗談だよ。そう言いながら、薄らと笑みを浮かべ拳銃を下ろす先生。
だが、俺にはそんな言葉、聞こえてない。
俺の瞳から、我慢していたものが溢れ出した。
とめどなく溢れる涙。
拭う事もせず、立ち尽くしている俺。
そんな俺を見て、先生も焦ったのか抱き締めてきた。
「……悪い、言い過ぎた」
「……ぁ…。ごめ…なさ……」
「すまない、さっきのは冗談だ。だから、泣きやめ」
「…っ冗、談？……でもっ...拳銃……」
俺は、しゃくり上げながらも先生に問う。
あぁ、これ？と、先生は右手に持っていた拳銃を見せる。
そして、徐に拳銃の先を俺に向け、なんの迷いもなく引き金を引いた。
「……っ！！冷たっ…」
「だから、冗談だって言っただろ？」
引き金を引いた拳銃から出たのは、弾では無く、水だった。
先生が持っていたのは、見た目が拳銃そっくりの、水鉄砲だっだのだ。
俺は、張っていた気が緩み、その場にズルズルと座り込む。
先生も、俺の目線に合わせ腰を下ろし、大丈夫か？と聞いてくる。
「……心臓に悪い…」
「だから、悪かったって。だが、お前が騙されるなんてな」
「……うるさい」
とりあえず、睨んでおいた。
先生は、気にする様子もなく寧ろ、口角が少し上がっている。
……ムカつく。
ふと、時計を見ればもうすぐ約束の時間だった。
先生もそれに気づいたのか、そろそろ向かうか。そう言って、立ち上がった。
そんな先生に、気になる事があった俺は声を掛けた。
「あ、ねぇ先生。さっきの冗談だって言ってたけど……俺が邪魔ってのも……その、冗談……だよな？」
先生は、真顔のまま何も答えない。
何言ってんだ俺……。と、後悔した。
刹那、頭に手を乗せられ撫でられる。
腰を下ろし直した先生が、言葉を紡ぐ。
「当たり前だ。…俺は今まで、お前を邪魔なんて思った事ないぞ？そんな風に思ってたら、あの時、迎えになんて行ってない」
「…………うん」
何だかむず痒い。
それと同時に、嬉しさが込み上げてきた。
そして、何故か恥ずかしさも込み上げ、俯いた。
「……っ…引き止めてごめん！もう大丈夫だから、行って」
「ん？あぁ。じゃあ、行ってくる」
そう言って、俺の傍から離れていく先生。
先生を見送ろうと、息を吐き頭を上げる。
視線の先にいる先生は、扉へ向かって行く。
そしてそのまま、扉を通り過ぎ美術準備室の奥へ向かっていく。
「…………え？」
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作者名：字の人 | 作成日時：2022年6月15日 0時
