【3年A組】僕らが過ごした10日間【男主】 (ページ35)

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宇佐美の悲痛な叫びに、先生は答える。

『そうだ…だからだよ。だから俺は、今、この瞬間に、お前達の教師になる為に、ここにこうして立ってるんだ。…宇佐美。お前に足りなかったものは、想像力だ。もし、自分の家の窓を割られたら、自分の服を、切り裂かれたらどんな思いをするのか…。嘘の投稿で言われのない中傷を受けたら、どれほど傷付くのか、お前にはその痛みを、想像できなかったんだ』
『ぅるさい、うるさい！うるさい！！』

宇佐美は叫び、耳を塞ぎながら蹲る。
先生は、宇佐美の手を掴み耳から離し、頬を包み込み前を向かせる。
先生は、逸らすことなく宇佐美の目を見つめる。
そして、言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

『よく聞け。景山は…お前を恨んじゃいなかった。寧ろ、〝自分のせいだ〟って言ってた。〝私が、いけないの。何も言わずに、香帆を拒んで。ちゃんと、伝えていれば、よかった〟って。〝友達が欲しかった〟って。〝私は、香帆と、本当の意味での、友達になりたかった〟って。そう言ってた』

先生の言葉を聞き、泣き俯こうとする宇佐美。
先生はそれを許さない。
再び、宇佐美の頬を包み込み、前を向かせる。

『いいか。宇佐美、お前は。そんな彼女の気持ちを、踏みにじったんだ』

泣き崩れ、床に蹲る宇佐美。
その宇佐美に、先生は最後の言葉を掛ける。

『それが、痛みだ…。その痛みを……一生、忘れんなよ』

自然と、涙がこぼれた。
先生の言葉が、叫びが、痛い程に伝わってきた。
それは宇佐美も同じだ。
だからこそ、あそこまで、涙を流せるんだ。
そんな宇佐美に、近付く茅野。
その手には、水色のハンドタオルが握られていた。
それを宇佐美に渡しながら、言う。

『澪奈がこれをくれた時、言ってたよ。〝それ、私の大切な友達が好きなキャラクターなんだ〟って。澪奈は、ずっと友達だと思ってたんだよ。あなたのこと』

ハンドタオルには、可愛らしいてんとう虫が刺繍されている。
それを見つめ、そのハンドタオルを握り締めながら、宇佐美は泣き続けた。

『今日の授業は、これで終わりだ。お疲れ様』

かるく頭を下げながら、授業終了を告げる。
足早に教室から去ろうとする先生を、逢沢が引き留めた。

『景山が自殺した理由が分かったんだから、僕達を解放してください』
『まだだよ。あの動画を作ったのは別の人間なんだよな？誰が、どういう意図で作ったのか。それが分かるまでは、俺の授業は終わらない』

そう言い残し、先生は教室を去った。