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『いやでも、それだけで生存確定は無理あるだろ。それに、確か佐藤も美術室にいるんじゃねぇのか?だったら、そのもう1袋は佐藤が食ったやつなんじゃ…』
『黎も居たよ。けど、寝てたんだ。だから、パンを食べたのは多分黎じゃない』
『あと、遺体の臭いが全くしなかった。普通なら多少の異臭が漂うはずだ』
『それだって遺体を別の場所に隠したり、バラバラにしてトイレに流したとか…』

まさか、自分の名前が出るとは思っていなかった。
名前が出た時、ちょっとドキッとした。
そして、里見の言葉。
確かに、この部屋からは全く死臭がしない。
退路が立たれている今、別の場所に遺体を運ぶなんて事も出来ないはずだ。
なら、石倉の言っていた後者の方が可能性はありそう……だが。
先生は多分、そんな事はしない。

『そんな事より、早く投稿者探した方が良くない?』

秋庭がそう言葉を投げると、黒板前に集まっていた数人の女子が投稿のコピーを見ながら、誰か分からない投稿者に向かって誹謗中傷の言葉をぶつける。

「…女って怖いねぇ」
『ねぇ……。それ誰から貰ったの?』
『………澪奈から』

改めて女子の怖さを感じていると、宇佐美と茅野の会話が聞こえてきた。
ほんの短い会話。
教室を出た宇佐美を、モニターから探す。
見つけた宇佐美は、中々の勢いで男子トイレへ入って行った。

「……え?」

モニターには見切れた宇佐美が映っている。
男子トイレでの会話を聞くため、スピーカーの音量を少し上げた。

『皆の前で懺悔させようとしても無駄だから。あんな投稿がバレたら、それこそ人生終わったも同然…。今まで築き上げてきたモノが全て崩れ去る』
『随分、やり逃げXに肩入れするんだな。………名乗り出なきゃ、誰かが死ぬぞ』
『……別にいいよ………。私じゃなければ…』

そう吐き捨て、宇佐美は男子トイレを去って行った。
尋常じゃない肩入れの仕方。
あんなの、自分が犯人だと言っているようなものだ。

「宇佐美が……なんで…」

困惑している俺の耳には、微かな話し声が聞こえている。
きっと、男子トイレ前で誰かが話をしているのだろう。
誰が何を話しているのか、微かに聞こえる声に集中する。
その中で聞こえた言葉。

『あいつ、まだ中いるか?』
『……いるよ』

嫌な予感がした。
咄嗟に男子トイレへ向かおうとしたが、鳩尾が痛み思うように動けない。
痛みで床に蹲っていると、ガンッという音に反射的に顔を上げた。

「…何、今の音……」

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作者名:字の人 | 作成日時:2022年6月15日 0時

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