【3年A組】僕らが過ごした10日間【男主】 (ページ27)

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『このカプセルのビンが、所謂ドーピングの薬だ。だが、これは一部を加工した、フェイク映像だった。つまり、景山はドーピングをしてなかったことになる。でも彼女は、この投稿がきっかけで自殺した』

先生のこの言葉に、反応した生徒___宇佐美が口を開く。

『それが原因？』
『あぁ、本人に聞いたから間違いない。そこで今日は、この動画を投稿した人間に名乗り出てもらいたい』
『……この中に、居るんですか？』

逢沢の問いに、先生は小さな声で肯定した。
そしてまた、この場にそぐわない高いテンションで、手を挙げるモーションをしながら生徒達に問う。

『やり逃げXさん！手ぇ挙げて！』

…挙げる訳ねぇだろ。そう、甲斐が吐き捨てた。
甲斐の言う通り、誰の手も挙がる事はない。

『そうかぁ…。じゃあ、夜の8時まで待つか。それまでに名乗り出てくれれば、今日死人は出ない』
『……じゃあ、名乗り出なかったら…？』
『…この中の誰かが死ぬ』

逢沢の問いに対して、少し楽しそうな顔で答える。
そして、ゆっくりと口角をあげ不敵な笑みを浮かべながら、言い放った。

『盛り上がっていこうか』

･

朝のホームルームが終わり、先生が美術準備室に戻って来た。
戻って来るなり、鉄板と工具箱を持ち、また美術準備室を後にした。
何処に行くのかと、モニターを眺めていると、男子トイレに入って行くのが目に映る。
昨夜、警察特別部隊･通称SITが校内へ突入しようとした際に、開けた穴を塞ぎに行った様だ。
男子トイレとは言え、流石に中にまで監視カメラは付いていない。
なので、中の様子を見る事は出来ない為、教室内が映る別モニターへ視線を移した。
そこには、数人のクラスメイトが里見と真壁を囲む様に集まって、何やら話をしている所が映し出されていた。
俺は、スピーカーのつまみを回し教室での会話が聴こえる様に、音量を上げた。

『中尾は多分、死んでない』
『どういうこと？！』

里見の口から告げられた言葉に、いち早く水越が反応を見せる。
周りに居るクラスメイトも、少々困惑気味だ。

『さっき真壁と2人で、美術準備室に行ったんだ』
『中尾がいたのか？』
『あ…いや。姿は見てない。でも、部屋の中が少し見えて、全く同じパンの食べかけが2袋あった』

先程、美術準備室に来たもう1人は、真壁だったのか。
それに食べかけのパン、気づかなかった。
そんな思考を巡らせていると、真壁の告げた状況に対して、石倉が反論気味に言葉を返す。