検索窓
今日:18 hit、昨日:27 hit、合計:40,829 hit

3月2日 ページ25

話し声が聞こえる。
この声は、先生……?と誰だろう。
一言二言相手と話し、先生の声は止んだ。
それを合図に、浮上した意識を覚醒させる為、閉じていた瞼をゆっくりと開く。
辺りを見回し、今居る場所を確認する。
見覚えのある景色が、視界に広がる。
美術準備室だ。
ゆっくりと視界をさ迷わせていると、先生と目が合った。

「起きたか、おはよう」
「……おは…よ。いま、なんじ…?」
「今は朝の8時半だ。起きれそうか?」
「………至る所が…いたい……」
「ははっ。まぁ、あれだけ怪我すればな」
「……特に鳩尾当たりが痛むんだけど…」

先生は無視を決め込み、いつもの椅子へと腰掛け、ノートパソコンで何かの動画を見始めた。
俺は床に寝転がっている為、動画の内容は見えないが、聞き覚えのある声が聞こえた。
先生の大好きな戦隊モノのワンシーンに、景山が表彰状を受け取ったであろう場面の声、更には、女の人の声。
多分、先生の恋人であった相楽文香さんの声だ。
その音をBGMに微睡んでいると、突然、警報音が鳴り響いた。
警報音に驚き、身じろいだ瞬間、鳩尾が痛み身悶えた。

「……っ!…っ……ぁ…」
「大丈夫か、ちょっと寝たフリしてろ」

そう言われ、痛みに耐えつつじっとしていると、うおっ!という声と共に、誰かが倒れた様な音が聞こえた。

「…あ、いや……。俺ら和食派なんで、パンじゃなくておにぎりとかないかなぁと思って…」
「なるほど、考えておくよ。………そろそろ授業を始めるから、皆に声掛けといて」
「はい。…いくぞ」

声の主は多分、里見だろうか。
きっと、もう1人誰か居たんだろう。
痛みもマシになり、身体の力を抜く。
未だにこんなに痛むなんて、どれだけの力で殴られたのか。
左腕と同様に、赤黒く染まっているに違いない。
そう考えただけで、ため息が出た。

「ため息付くと、幸せ逃げるぞ?」
「…………………」

何も言わずに、とりあえず睨んでおいた。
誰のせいだ、という意味も込めて。
そんな事は気にも止めず、救急箱を持って近づいてくる先生。

「ほら、包帯とか諸々交換するから」

起き上がれるか?と、手を貸してくれる。
その手を借りて起き上がるが、動く度に鳩尾が痛む。
ついでに、左手も痛い。
咄嗟とは言え、刃なんて掴むモンじゃない。
悶々と考えている俺を余所に、先生は器用に包帯や湿布を剥がしていく。

「ははっ。1日で怪我しすぎだろ、お前」
「誰のせいだよ、誰の」
「はっはっはっ」

……………何かムカつく。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
93人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , ドラマ , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:字の人 | 作成日時:2022年6月15日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。