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今まで黙っていた先生が、呆れながら言葉を口にした。
その言葉に噛み付くように、宇佐美が言い返す。

「うっさい!私は卑怯な真似してまで1位になろうとしたあいつにムカついたから喋りたくなかっただけ!それの何が悪いの?」
「香帆に1票」
「クスリ使うような奴とは仲良くなれねぇよな」
「そうそう…自業自得でしょ」
「スポンサーから沢山お金貰って豪遊してたって話も聞くし……他にもいろいろボロが出てくんじゃね?」

宇佐美の言葉を筆頭に、次々とここには居ない景山への言葉の攻撃が始まった。
それは、堰を切ったかのように止まることを知らない。
今も尚、言葉の攻撃は続いている。

「景山って男関係も派手だったんだろ?」
「アスリートって…すっごい性 欲強いんでしょ」
「俺の友達もヤッたって言ってたし!」
「嫌われるべくして嫌われた人間だったって事だよ…あいつは」

何故こんなにも、居ない人間のことをここまで言えるのだろう。
…意味が分からない。
俺はもう何も聞きたくなくて、両手で耳を塞いだ。
そんな事をしても、全ての音をシャットダウン出来るはずがない。
塞げども、聞こえてくるクラスメイトの闇の部分。

「……あんな奴…死んで当然だったんだよ」

甲斐の言葉に、我慢の限界を超えた。
俺は椅子から立ち上がり、甲斐に手を上げようとした。

「…ふざ…けんな……」

小さいがはっきりと聞こえた茅野の声。
俺は動きを止め、茅野へ視線を向けた。
肩で息をし、小さく俯いていた。
ちゃんと聞こえなかったのか、甲斐がイラつきながら茅野に聞き返す。
次に響いたのは、今まで聞いたことの無い茅野の怒号。

「ふざけんじゃねぇぇぇ!!!!」

茅野は机の間を駆け走り、甲斐目掛けて膝蹴りを食らわした。
攻撃をまともに食らった甲斐は、後ろへ倒れ込み、唖然とした表情をしている。
茅野の怒りは収まらない。
勢いのまま、言葉を投げつけた。

「あんた達に何が分かんの?!澪奈の…何が分かんの?!澪奈はいつも凛としてて…結局薬 物なんてやってなかったし!なのに、情報に踊らされて彼女を追い詰めたのはあんた達じゃない!何で死んでまで澪奈が悪口言われなきゃいけないの!?許せない…絶対許せない!」

今まで隠していた、我慢していた茅野の本音。
初めて見る茅野の姿に、クラス全員が唖然としてその人物に視線をぶつける。
……けど。言葉を紡ぐ、その声は震えていた。

「1番許せないのは…私だ」

茅野の目から、涙がこぼれた。

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作者名:字の人 | 作成日時:2022年6月15日 0時

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