【若彩】*俺って、まじ単純だわ* ページ1
「か、和臣!」
俺は嬉しさと――ほんの少しの恥じらいが心の中で交じり合い、気持ちが明らかに高ぶるのを感じる。
今まで、「若武」と呼ばれることに耳が慣れていたせいか(とはいえ、そう呼ばれることが好きな自分もどこかにはいた)、いきなりの彼女の「和臣」呼びには腰が砕けそうになるほど衝撃が強かった。もちろん、良い意味でだが。
「あ・・若武、ごめん・・あの、なんとなく呼んでみたくなっちゃって」
呼んでみたくなっちゃって・・か。その言い方がどれほど彼氏として気持ちの高ぶっている俺に追い討ちをかけるがごとく威力のあるものなのか、まだ俺の彼女は理解していないようだ。
「いや・・すっげえ嬉しい」
興奮した脳を冷やしつつ、俺はそうアーヤに言った。KZのサッカー試合で3回シュートを決め新聞に取り上げられたときくらい、頭がオーバーヒートしそうだからだ。
「え、そうなの?じゃあ、これから和臣って呼んでもいいかな?」
「べ、別に構わねぇけど」
「そうかぁ、・・・じゃあ、和臣。えっと、今から和臣には・・勉強教えてもらいたいな!」
満面の笑み。
その破壊力たるは、破壊神よりも上回るかもしれない・・いや、現にそう、俺はりんごよりも真っ赤に頬が色づき、まともにアーヤの顔が見れなくなっている。「和臣、大丈夫?」アーヤが無意識に追い討ちをかける。
――あぁ、駄目だ。
男って、マジ単純だわ。俺ってめっちゃ単純だわ。下の名前で呼ばれただけで完璧にノックダウンされてんじゃん何だよ。俺今めっちゃ反応してるじゃん喜びすぎじゃんかよ・・。
いやだめだ・・ここは気持ちを入れ替えて・・
「アーヤ・・いや、彩!勉強、俺一生懸命教えるから!」
「え!?えっとぉ・・うん、ありがとう!和臣!」
「俺の家でみっちり教えるから!変な行動したら、今日は特別に殴ってくれてもいいからな!」
「え・・殴る?」
ポカン・・とした表情のアーヤ――彩は、しばらくはたち止まっていたが、やがて「ありがとう、和臣先生!」なんていう俺の心をノックアウトする言葉を紡いだ。
あぁ、和臣 呼びの破壊力について、後でアーヤにきちんと教えてやらないとな。
これが初めての日になるとは、俺もアーヤも今は知らない話なので、これ以上は何も言わないでおく。
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さまー - アーヤが美門って呼んでるから翼って読んでて欲しいです! (5月24日 20時) (レス) @page25 id: ad3984bf8f (このIDを非表示/違反報告)
pua - 砂彩書いて欲しいです!ホント面白いです!わたしもこう書けるようになりたいっ! (2021年5月18日 13時) (レス) id: b5e633d6ad (このIDを非表示/違反報告)
ゆっゆっち - 黒彩もっと見たいです!体に気を付けて頑張ってください (2020年7月5日 20時) (レス) id: 14eff17734 (このIDを非表示/違反報告)
間葉 - 黒彩がみたいです! (2019年3月29日 23時) (レス) id: 8e4a69fdea (このIDを非表示/違反報告)
mimiko(プロフ) - すごく面白いです!美彩の作品をもっと読みたいです☆更新頑張ってください☆ (2018年3月25日 17時) (レス) id: 5555f18d7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルグラ | 作成日時:2017年10月27日 16時