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目が覚めた。
.
そこは病室のような場所だった。
窓から白い差し込む光が眩しくて、目を細めた。
『…ここどこだ』
「病院っすよ」
バッ、と起き上がる。
声の主を探すと、
冷たく光る瞳と目が合う。
『君は…』
「…説明すんのだるいんで ショッピ でいいです」
学ランを着た彼は気だるげにそう答え、俺から目を逸らす。
端正な顔立ちをしている少年だった。
ズボンのポケットから煙草の箱のようなものが見える。
『君、俺のこと知ってる？』
「はい、まぁ。アンタの後輩なんで」
『俺、なんで病院にいるの？』
「やっぱり何も覚えてないんすね」
彼は一向に目を合わそうとしない。
それどころか態度が冷たかった。
正直、嫌われているのかと思ったけど
そんなことを考えられる余裕はなかった。
「アンタ昨日の放課後倒れたんすよ、学校で」
『…学校で？』
「んで、その時。頭を強打して」
「アンタの記憶、すっぽり飛んだんです」
冷静に答えた彼。
心做しか手が震えているように見えた。
『記憶が飛ぶ？…記憶喪失ってこと？』
ありえない。
まさか自分が、と思った。
だって、昨日まで普通に過ごしてきたじゃないか。
あれ…昨日？
本当に、
全く思い出せない。
昨日食べた物や着た服。
通った道、話した人、見た景色。
友達や家族の存在まで。
(俺は本当に、記憶喪失なんだ)
実感が湧いてくると、恐怖が渦巻いた。
だって、急にこんなこと…。
明るかった眼前の景色が急に暗くなったようで、不安が募った。
『…何にも思い出せない』
「当たり前です」
『これから、どうすればいいかな』
今度は俺の声が震えている。
自分のことすら分からないまま生きていかなきゃいけないのだろうか。
俺はきっと、分かりやすいように困惑しているだろう。
ショッピくんに視線を移すと
彼は目線を斜め上に移し、何か考え込んでいた。
しばらく沈黙が続いたあと、ようやく彼は俺の瞳を見て
こう呟いた。
「とりあえず、教えるべきことはなんでも教えます。アンタが頼れるのは俺だけなんで」
その瞳は真剣そのものだった。
彼は本当に不思議な瞳だ。
まるで俺に語りかけるようで。
彼は俺に手を差し伸べた。
暖かな心地よい手だった。
『…ありがとう、ショッピくん』
そっと手を握り返す。
キラっと瞳が光った気がした。
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作者名：さらさらさん | 作成日時：2019年11月23日 19時
