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きっとよほど疲れていたんだと思う。
学校帰り
俺は気がついたら知らない街を歩いていた。
(はぁ…何処やここ)
知らない街を歩くのは得体の知れない背徳感がある。
だけど家に帰りたい気分でもなかった。
特に行くあてもなく暮れていく空を眺めながら歩を進めた。
(いつから付き合ってたんやろ)
(……気付かへんかったってことは、大分夢中ってことやん)
(……)
「あーあ、だっさ…」
歩調が早くなっていく。
1人になると余計なことばかり考えてしまう。
寒くなってきたし、そろそろ帰るか。
「君には、消したい過去とかある？」
不意に後ろから声が聞こえた。
振り返ると狐の面を付けた奇妙な男が立っていた。
なんやこいつ。
「何やら浮かない顔をしていたからつい、声をかけてしまったんだけど」
「……なんかの勧誘ですか」
「まさか」
今は人に構っていられるほど心に余裕がない。
それに明らかに不審者だ。関わらない方が安全だろう。
「あー！待って。別に怪しいものじゃないから」
「すみません、急いでるんで」
「ちょっと話だけでも聞いてくれ」
グッと腕を掴まれてしまう。
意外と力が強くて振り解けなかった。
「ちょっと、やめてください！」
「君は今の状況が正しいと思うかい？」
「は、？急になんですか」
「少しでもやり直したいとは思わないかい？」
男の声は真剣だった。
言葉の意図は読めないが、
早く撤退したかったので適当に頷いた。
「君にこの薬を任せようと思ったんだ。まだ実験段階だけど、使ってみて損はないはずだ」
男は白衣の胸ポケットから小さな袋を取り出し俺に渡した。
「なんすかこれ、怪しい薬じゃないですよね」
「うん、だけどその薬をどう使うかは君に任せるよ」
「…使い方決まってないんすか」
「うん」
ニンマリと笑みを浮かべる男を睨みつけ、薬を鞄にしまう。
やり直せるとかどうとか言っていたけど。
具体的な説明はされていない。
「その薬の効果が見えてきたら、私に報告してくれ」
男は連絡先の書かれた紙を渡し、足早に立ち去った。
(なんやったんや…)
連絡先の書かれた紙をしまい、家路につく。
何だか犯罪に手を染めてしまった気分だ。
何に使うのかは俺次第か。
「あ、何の薬か聞いてないやん」
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作者名：さらさらさん | 作成日時：2019年11月23日 19時
