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「Aさん。おはようございます」
『ショッピくん…！』
チャイムを押したのはショッピくんだった。
紫色のヘルメットを頭に被り、いかにも眠いといった表情を浮かべている。
ごめんねバッドタイミングとか言って。
『おはよう。どうした？』
「いや、忘れ物しちゃったんで。入ってもええですか？」
『あぁ、いいけど』
ショッピくんが忘れ物をするなんて珍しい。
きっと余程疲れていたんだろう。
とりあえず彼を部屋へ招こうとすると玄関のドアを開けると、
反対にゾムさんが荷物をまとめて出てきた。
『あれ、ゾムさん帰るんですか？』
「え、ゾムさんまだおったん」
「もう昼近いしな。俺もそんな長居できひんわ、ありがとなAくん」
ゾムさんは靴をつっかえ空き缶が入ったゴミ袋を持ち、玄関を出ようとする。
最後まで丁寧な人だ。
『今度はもっと早い時間に集まりましょ、』
玄関先まで送って行こうと追いかけると、
彼は困ったように目を細めて笑った。
「ほんまにかわええなAくんは。」
そう言い、ドアを開け出ていった。
静かになった部屋に遠ざかっていく足音だけが響き渡る。
表情の曇ったショッピくんを横目に玄関の鍵を閉めた。
とりあえずショッピくんの忘れ物を探すため部屋に行こうとすると、
グッと腕を掴まれる。
「ごめんなさいAさん」
俯きがちに呟いた。
『えっなになにどうしたの』
「…嘘なんすよ」
『嘘、って何が？』
パチリと目が合った。
「忘れ物、本当はしてないんす」
『え？』
表情を変えることも無く淡々と言う彼の耳は、
ほんのり紅く染まっていた。
「Aさん連れ出す口実だって言ったら、怒りますか？」
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作者名：さらさらさん | 作成日時：2019年11月23日 19時
