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あの後、何やかんやあって朝食を共にすることになった。
暴食で有名なゾムさんは今朝も絶好調のようで、コスト〇のピザを1人で食べきっていた。恐ろしい。
「いやー、悪いな。ご飯まで提供して貰っちゃって」
『いいんですよ全然』
申し訳なさそうに言うゾムさんに、首を横に振る。
無理やり泊まらせてしまったのは俺だし、むしろ謝りたいのは俺の方だ。
彼は少々優しすぎるのではないかと思う。
しばらく談笑をしていると、窓から暖かな光が差してきた。
もうお昼近いのだろう。時が経つのが早いと感じるのは、人と接しているからだろうか。
急に静かになったので、
ゾムさんのほうに目をやると何やら難しそうな表情を浮かべていた。
『…ゾムさん？』
「……Aくん」
ゾムさんは俺の方を向きながらグイッと見を乗り出した。
黄緑に光る瞳に息を呑みながらも、
次の言葉を待つ。
「…聞いたで。色々大変だったみたいやんなぁ」
『…あ、えっと。記憶、のことですか？』
「おん。まだ戻ってないんやろ？」
俺の手をそっと握る。
その手の感覚が誰かに似ているようで、何処か懐かしかった。
「確か、学校で倒れたんやっけ？」
『はい。そのとき頭を強打してしまって…』
「お医者さんからはなんて言われたん？」
まるで尋問のようだが、とりあえず医者から言われた言葉を思い出す。
『えーと、強い刺激を与えれば戻る可能性はあると言ってたような』
「ほーん。強い刺激ねえ…」
(一体なんなんだ…)
何かに納得したように頷く彼に、首を傾げる。
いきなりそんな事を聞いてきてどうしたというのだろう。
「でも、なーんか引っかからん？」
『……え？』
「だって、頭を強打したくらいでそんな何年も記憶戻らんかな〜って思ったんよ」
ニンマリと笑う彼。
その言葉の意味を理解するのには少しだけ時間がかかった。
『それって…どういう』
「俺さ、思ったんやけど」
手を握る力がギュッと強まる。
ゾムさんとの距離が一気に近くなった。
.
「Aくん、誰かに騙されとるんちゃう？」
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作者名：さらさらさん | 作成日時：2019年11月23日 19時
