・ ページ7
．
｢スニョア」
練習が終わって、ほとんど誰もいなくなった部屋に響いたのはさっきから床にぺたーっと寝そべっているAの声だった。
突然聞こえたその声に思わず｢うわっ｣と声をあげてしまう。てっきり眠っているものだと思っていた。
だって、練習が終わって、全体で挨拶をしてからミンギュに潰されかけようが、ジュニが頬を突こうが１ミリも動こうとしなかったから。
HS｢起きてたのかよー｣
｢起きてないよ｣
HS｢ええ？｣
確実に起きている。けど、その瞳は開かずに閉じられたままで自分に向いているのは声だけだった。
近付いて上から顔を覗き込めば、長い睫毛が目に入った。相変わらず長い。というか相変わらず綺麗な顔をしているなぁと思う。奥まで透けて見えそうな瞳とか、薄めの口とか雰囲気含めて全部。
HS｢帰んねえの？｣
｢いいよ。帰ってて｣
HS｢…いや別に、急ぐ用事もないんだけどさ｣
しばらく上から眺めていれば、徐に、開いた瞳の奥から琥珀色を覗かせた。
あ、まずい。別に悪いことなんてしていないのに目に掛かった前髪を退けようと伸ばしていた手を勢いよく引っ込める。
Aはそんな自分を見ても何も言わなかった。あろうことかまるで自分のことが見えないみたいに｢スニョンは＿＿｣と名前だけを呼んで、また動かなくなる。
HS｢なに？｣
｢やっぱりなんでもない｣
HS｢なんでだよ｣
｢なんでもないって｣
ほらほら言ってみろ、とさっき引っ込めた手を伸ばす。冗談半分で頬に触れれば、それに対抗するように急に上半身を起こした。
そのせいで下にあったはずの顔がぐっと近づいて、流石に驚く。鼻と鼻がぶつかりそうな距離だった。
HS｢…っわ｣
｢あははっ｣
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1049人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊(プロフ) - ぴょんさん» コメントありがとうございます。自分の文章にそう言ってもらえてすごく嬉しいです！こちらこそこれからもよろしくお願いします☺︎ (2022年9月26日 9時) (
レス) id: 1c5041063e (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - すごく深みのある文章で、読み応えがあります。とても面白い小説を生み出して下さりありがとうございます。これからも更新楽しみにしております(><)♡ (2022年9月26日 0時) (レス) id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柊
| 作成日時：2022年9月23日 17時
