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｢怒られなくてもしないよ。そういうことを求めて生きてるわけじゃないし」
優しいけれど、優しさの塊かと聞かれれば案外そうではないのかもしれない。
人やものに対する共感とか同情とかそういったものではあまり動こうとはしないし、理想を掲げて動くかと聞かれればそうでもなくて、どちらかと言えば現実主義だと思う。
VN｢なるほど？」
｢まあ、そんなに深く考えることじゃないと思う」
ああでも、今はこう言っているこの人にだって、時間が経てば、いつか自分たちより優先したいと思う人が現れるんだろうか。
呼ばれたら駆けつけて、呼んだら来てくれるような、肩に掛かる重圧を任せてしまえるような相手が。
この人の１番でいる自信は今も昔も微塵もないけど、自分が知らないどこかで、自分の知らない相手にAが微笑むのかと思うとそれは少し違和感がある。
｢そもそも電話番号ってあんまり教えたくないんだよ。何かあって変えたくないから」
VN｢…まあ、手続きとかあるし？」
｢ああ、それもあるんだけど」
VN｢けど？」
｢気に入ってるんだよ。今の番号が」
VN｢番号に気に入るとかある？」
｢あるある」
なんで？と首を傾げれば、Aが鞄からスマホを取り出した。ケースは例の自分のやつで、いつまでそれなの？と思うけど、それを聞くとAは決まって気に入っていると笑う。
ああ、そうだ。この人は気に入っていると信じられないほど長い間それを変えようとしないんだった。
｢ほら、これこれ」
VN｢これAの番号？」
｢そうだよ」
｢下4桁がハンソラの誕生日と同じでしょ」
VN｢それが？」
｢だから気に入ってるんだよ。変えたくない理由はこれ」
VN｢…それだけ？」
｢それだけも何も自分がこの携帯を使い続けるには十分過ぎるくらいだよ」
変えなくていいのなら死ぬまで変えたくないとAが言う。
それがあまりにも真剣そうな表情だったから、何も余計なことを考える必要なんてなかったのだと安心してしまったのも事実で。
＿＿＿後日談ではあるけれど、あの連絡先の書かれた紙を静かに事務所のシュレッダーに掛けているのを自分は見逃さなかった。
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柊(プロフ) - ぴょんさん» コメントありがとうございます。自分の文章にそう言ってもらえてすごく嬉しいです！こちらこそこれからもよろしくお願いします☺︎ (2022年9月26日 9時) (
レス) id: 1c5041063e (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - すごく深みのある文章で、読み応えがあります。とても面白い小説を生み出して下さりありがとうございます。これからも更新楽しみにしております(><)♡ (2022年9月26日 0時) (レス) id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊
| 作成日時：2022年9月23日 17時
