痛いくらいに ページ7
―――...
side柊平
美「柊平？もう帰るの？」
玄関を開けようとしたタイミングで、後ろから美乃さんに話しかけられる。
「...はい。
凪咲、多分もう大丈夫だと思う。」
美「...柊平､ありがとね。
あんたや那智があの子の傍に居てくれて、
本当によかったと思ってるよ。」
そう言って､微笑む美乃さん。
最近、凪咲は美乃さんに似てきたんだな...。
きっと、凪咲もこんな風に綺麗に笑う人になるんだろうと思った。
「...これからも、それは変わんないですから。」
美「また、いつでもご飯食べにおいで。」
震えそうになる声を誤魔化せた自信はなかったけど、
美乃さんは何も聞かずに見送ってくれた。
―――.....
side那智
リビングで、テレビを観ているとスマホが震える。
「...！」
届いたばかりのメッセージを読み終わるより、早く家を飛び出した。
―――.....
side柊平
きっと、これから先あれ以上の嘘をつくことはない。
本当は、あのまま抱きしめていたかった。
強引に、奪ってでも...
全部、俺のものにしたかった。
「...んなこと、出来るわけないだろ。」
自分のどす黒い欲望に嫌気がさす。
凪咲の笑顔と引き換えに、得られるものにはなんの価値もない。
周りに引かれるくらい甘やかして、
息もできないくらい大事にして、
痛いくらいに愛した。
そんな日々が、終わりを告げることになったとしても...凪咲には笑っていてほしい。
きっと、もうすぐ
もう一人の幼なじみが息を切らしてやって来る。
何から、話せばいいだろう。
告白した。
冗談だって誤魔化した。
励まして、慰めた。
いつもみたいに、呆れた顔してくれればいい。
そうしてくれないと、
きっと俺は泣いてしまう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：美波 | 作成日時：2020年6月23日 20時
